姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―

私の反対隣にいた榛名聖が私の肩に手を置きながら、天音ちゃんに向かってヘラヘラと緩い笑顔を見せる。

榛名聖の手の重みで我に返って、私も笑顔を作り直した。

天音ちゃんは榛名聖を一瞥すると、その軽薄さに“貴方は嫌い”と顔に書かれているかと錯覚するほど渋い顔をして近江涼介の方へと向き直る。

「初詣ぶりですね。これから姫ちゃんとお昼ですか?」

「……そうだけど。」

淡白な返事。つまらなそうな無表情。

天音ちゃんが投げかけるなんでもない世間話に、近江涼介が端的に答えるやりとりが続く。
でも、私達以外の人を認識しないはずの切れ長の瞳は天音ちゃんをしっかりと見つめている。

(あ、そうだ。こんなシーンあったかも。)

ヒロインと親友がいるところに意中の男がやってきて、親友が気を利かせていなくなって、ヒロインと男を2人きりにする場面。

そうだ、それをやらなくちゃ。
だって友達なら、応援しないといけないんだから。

(でも、なんで。こんなに気が重いんだろう?)

「……あー!ジュース!私、ジュース飲みたいんだった!ちょっと買いに行くので……失礼!」

原因不明のモヤモヤを吹き飛ばす様に、態とらしいくらいカラッと明るく言い放つ。

「えっ?姫ちゃん?」

そしてそのまま返事もせずにみんなに背を向けると、廊下を走り抜けて突き当たりの階段を降りていった。
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