姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―
#姫のトラウマ
Ep.182 お母さん
『どうして姫のおうちにはお父さんもお母さんもいないの?
寂しいよぅ、会いたいよぅ……。』
『姫、大丈夫。兄ちゃん達がずっと側にいるから。
何があっても俺達が姫のことを守るから。』
――これは小さい頃の記憶。
泣きじゃくる幼い私を抱きしめながら、まだ小学生の渉兄ちゃんと傑兄ちゃんが必死に宥めている。
自分達だって心細いはずなのに、2人とも私をこれ以上悲しませない様にいつも強くいて、そして優しく寄り添ってくれていた。
そんな兄ちゃん達がいたから私は、両親とほとんど顔を合わせない毎日でも不幸だとか思わずにいられたんだと思う。
――――……
「姫……よね?うわぁ、大きくなってる――……。」
無邪気に驚いて丸くした目をキラキラとさせるいい歳した女。
この人は、私の母親だ。
「私の若い頃とそっくり!こんな清楚な見た目の子に成長するとは思わなかったけど……
アラ?こっちの子は彼氏?
こんな可愛い子捕まえるなんてやるじゃない!さっすが私の子♡」
見た目はメイクもファッションも派手目の綺麗な熟女。
しかし一度喋り出すと息継ぎする間に笑ったり顔を顰めたりと、表情の変化が目まぐるしくまるで子どものようだ。
「……いえ、僕は姫さんの友人です。」
初対面とは思えぬ近い距離感でまじまじと榛名聖を観察する失礼な態度にも動じず、柔和に微笑む様子は他所行きモードだ。
「隠さなくてもいいわよぉ。いつから付き合ってるの?」
「お母さん!」
賑やかに喋る母親を咎める様に呼ぶ。
そして、鍵を開けておいた玄関のドアを開けて先に入る様促す。
「ここで喋ってると近所迷惑だから……中に入ろう。」
「アラやだ、そうよね!じゃあお邪魔するわね。」
「そこは“ただいま”でしょ?久しぶりとはいえ自分の家なんだから……」
母親の自由なペースに振り回されて少し困りつつも、3人で家の中へと入った。