姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―
さっきまで他所行きお世辞モードだった癖に、急に素に戻って変なことを言うからだ。
榛名聖は可愛らしく微笑んだままチラリとこちらを見ると、小悪魔的にニヤリと唇の弧を深める。
これは揶揄われている!遊ばれているのだ、絶対に。
そう確信しても思わず照れてしまったのは、声色が無駄に色っぽいのと表情に嘘がない様に思えたせいだ。
「あらあらあらー♡やっぱり付き合ってたんじゃないの。」
「いえ、友人です。」
口元を抑えてニヤついている母親の方に、榛名聖が向き直る頃には再び他所行きの顔になっている。
不覚にもドギマギしてしまった自分を整えて、漸くできた話しをする隙に切り込んだ。
「てっ、ていうか急に帰ってきてどうしたの!?
海外赴任はもう終わり?日本に戻るの?」
「え?」
私の言葉に母親はきょとんとして首を傾げる。
そして次いだ言葉に耳を疑った。
「海外赴任なんてしてないわよ?」
「えっ、それどういう事――……」
その場が一瞬で凍りつく。
背中に小さな冷たい指が触れたような感覚。
何かが静かにひっくり返る音がした。