姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―
Ep.185 優しい願い
玄関のドアまで開閉された音に、傑と渉は焦って後を追いかけようとした。
すると、気配を消していた聖が静かに扉の前に立つ。
「俺が行きます。」
人好きのする穏やかな微笑みは、感情的になっている傑達に有無も言わさないような圧がある。
「……うん、じゃあ頼んでいいかな?」
「ちゃんと連れて帰るので。
……まだ帰らないでくださいね?」
妖しく冷淡な笑みを残して、聖もリビングを後にした。
***
外の空気は、やけに冷たかった。
息を吸うたびに、胸の奥がひりひりと痛む。
「今日はひーちゃんとよく追いかけっこするなぁ、俺。」
いつもの図書館の隣にある小さな公園のブランコに座っていた私を、榛名聖が目の前でにこやかに見下ろしてコートを差し出してきた。
「なんでここがわかったの!?」
「ひーちゃんが涼ちゃんと密会してる図書館の隣に、確か公園あったよなぁ、って記憶してたんだよねぇ。
取り乱して当てもなく突っ走ったひーちゃんが行くならここかなって。
俺こういうの当てるの得意だから〜。」
怖い。
こんな深刻な状況なのに榛名聖の特技が怖い。
恐れ慄きながらコートを受け取って羽織る間に、榛名聖も隣のブランコに腰掛けた。
あたりは真っ暗で、ぼんやりとした街灯だけが私達を照らしている。
ブランコが揺れる度靴底が砂地を擦るのをただぼんやりと眺めながら、少しずつまとまらない気持ちを口にした。