姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―

Ep.201 見てしまった


その日の放課後、旧校舎にスマホを忘れてきてしまったことに気付く。
冬の夜は短い。早く取りに行かないと、薄暗い雑木林をまた1人で肝試ししないといけなくなってしまう。

(幽霊はいない。
いつかのあれは全部榛名聖のイタズラ……!)

身震いしながら急いで旧校舎に続く雑木林を駆け抜ける。
まだ日は出ていて、裸になった木の枝の間から差し込む夕陽はまだオレンジ色。

ようやく旧校舎まで辿り着きそうな時、入り口の側に2人向き合う人影を見つけた。

驚いて思わず足を止めて側の木の影に隠れる。
そこからそっと顔を覗かせて様子を伺い見れば、後ろ姿は知らない女。

そしてこちら向きで立っているのは広瀬真だ。


「ずっと前から好きでした!私と付き合ってください!」

私に背を向けている女は、広瀬真に向かって勢いよく頭を下げ、手を伸ばす。

その表情こそは見えないが、その手は遠目でもわかるくらいに震えている。
相当緊張していることと、勇気を出したのだということがわかった。

(誰が告白されてるとこなんて初めて見た……!)

思わずごくりと喉を鳴らして手に汗を握る。
まるでテレビドラマでも見ているようかのような緊迫感。

しかもその“誰か”は広瀬真――

(……どんな顔してるんだろ?)

奴の気持ちを知った後なのに――
いや、むしろだからこそ、そわりと好奇心が疼き出す。

そーっと音を立てない様に、木の影から顔を突き出して目を凝らした。
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