姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―
Ep.213 無駄なこと
翌日の授業間の10分休憩。
姫が離席している隙を見計らって、聖は後ろの席でずっと何か書き込みをしている真の方を向いた。
「相変わらずガリ勉だねぇ。捗ってる〜?」
「うるせぇ。忙しいから話しかけんな。」
ノートや参考書が一面に広がる机に聖は何も気にせずゆったりとスペースを確保して肘をつく。
真はそれに煩わしそうに眉を顰めるが、集中を切らしたくないのか文句の一つも言わず、目も合わせずに勉強を続けた。
「まーくんってさ。ひーちゃんのこと避けてるの〜?」
穏やかな微笑みと共にストレートにぶち込んだ質問に、真は驚いて顔を上げた。
「はぁ!?別に避けてねーけど。」
顔に“何故”とか“意味不明”という思考が浮かび上がって見えるような怪訝な表情。
嘘ではなさそうだと聖は冷静に観察を続ける。
「そっか⭐︎ 最近放課後あっという間にいなくなっちゃうからさ〜。
ひーちゃんが気にしてたよ?避けられてるのかなって。」
聖の言葉に真の視線が横に流れる。
姫の顔を想起したのだろう、今度は“あの自惚れバカ”という思考が浮かび上がった。
「……最近は進路のことでいろいろ忙しくしてただけだ。
アイツは何も関係ねー。」
真は「もういいだろ」と面倒くさそうに深いため息をついて頭を掻く。
聖はまだ追及の手を緩めないとばかりにずっと作り笑顔だ。
「へ〜。それが事実だとして、ひーちゃんが避けられてるって勘違いするのはそれなりの理由があるからでしょ?
……何か心当たりある?まーくん。」
事情を知らないフリをして核心は避けたが、これは“全部知っているぞ”という脅しだ。
もっとも真は涼介ほどは察しが良くないから、何となく圧を感じる程度なんだろうけど。
「……知らね。」
変な間と声の小ささに、嘘が下手くそだと聖は呆れている。