姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―
#恋の行方は
Ep.216 避けられてる
3月ももう下旬に差し掛かっている。
卒業式もとうに過ぎて、毎日飽きるレベルで校内に響き渡っていた卒業ソングも、卒業前の告白ラッシュもなくなった。
今は進級のソワソワ……
なんてこともなく、教室は受験戦争の空気に染まって、息苦しいほど静かだった。
「そこが進学校の面白くないところよね!」
昼休み、旧校舎のいつもの教室でクッキー片手に私は顰めっ面でそう言った。
「気が引き締まっていいだろ。
お前らといると気ィ緩むから。」
言いながら広瀬真は例によって例の如くテキストを広げて勉強に忙しそうにしている。
「え〜、どんだけ俺達のこと好きなの〜?まーくん。」
「ちっげぇよ!お前らが勉強しなさ過ぎるから気が緩むんだよ!!」
それを体現するかのように、榛名聖は呑気にスマホ片手にお茶を飲んで今日もヘラヘラ笑っている。
そ私も呑気に頬杖をついてお菓子を食べているしで、よく両隣に惑わされずに勉強できるなと内心感心している。
日常の変わらない風景。
ふと会話が途切れても気まずい空気になることもない。
近江涼介はずっと変わらない無表情。
でも伏せたその目には情緒の揺らぎを秘めている。
広瀬真はそんな近江涼介の心を探るようにジッと盗み見る。
榛名聖は緩く穏やかな笑みを浮かべているが、それは腹の中で何かを考えている時の顔だ。
私も笑いながら、頭の片隅にはずっと“最後にやらなくちゃいけないこと”が引っ掛かっている。
“いつも”は変わらないようで、実は常に変わっている。