姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―
Ep.236 卒業の時
淡く青く澄んだ空は、雲ひとつない快晴だ。
柔らかな陽光と春の匂いを纏う風が、今日の晴れの日を優しく祝福してくれているようだった。
――今日は卒業式。
私達の高校生活最後の日。
体育館には真っ白な制服を着て、胸に赤い花を添えた卒業生達がしめやかに整列している。
校章を掲げた正面を向くその顔は、涙ぐんでいたりどこか誇らしそうだったり。一人ひとりが高校生活3年間の重みを実感していることを表していた。
「卒業証書、授与。」
その集団の中の1人として、私も胸を張って座っている。
口元に僅かに微笑みを湛え、背筋をまっすぐ伸ばす居住まいはその中でも際立って美しく見えていることだろう。
私達のクラス、3年A組から順番に1人1人呼名されていく。
返事の仕方、歩き方、卒業証書を受け取る姿まで何度も繰り返して練習させられてきた。
だから淡々と流れる作業のように見えるのに、感動的に見えるのは荘厳なクラシック音楽のせいなのか、感極まっている人達のせいなのか。
後方の保護者席では、スーツ姿の傑兄ちゃんと渉兄ちゃんがスマホを構えながらすでに涙ぐんでいた。
「近江 涼介」
「……はい。」
厳かな雰囲気に合う落ち着いた低音。
飄々と立ち上がり歩く姿は涼やかで、女子達のほぅっと
惚けた息遣いがあちこちから聞こえてきた。
けれども奴はそんなことまるで気にしていない。
存在を認識していないのかと疑わしくなるほどだ。
「卒業おめでとう。」
なんの感慨もないかのように校長が差し出す卒業証書を無表情で受け取る。
そしてゆっくりと全体の方へ振り向くと、視線を落として舞台前で3連並んだ私と広瀬真、榛名聖の方をじっと見た。
その瞼も口も微動だにもしていないのに、人間らしい温度を帯びた視線に感じた。
「今こっち見たねぇ。」
「……見た。けど喋りかけてくるなよ……。」
顰めた榛名聖の声音はとても楽しそうだ。
隣に座る広瀬真は、前を向いたままほとんど口を動かさず苦笑混じりに返事をしている。
柔らかな陽光と春の匂いを纏う風が、今日の晴れの日を優しく祝福してくれているようだった。
――今日は卒業式。
私達の高校生活最後の日。
体育館には真っ白な制服を着て、胸に赤い花を添えた卒業生達がしめやかに整列している。
校章を掲げた正面を向くその顔は、涙ぐんでいたりどこか誇らしそうだったり。一人ひとりが高校生活3年間の重みを実感していることを表していた。
「卒業証書、授与。」
その集団の中の1人として、私も胸を張って座っている。
口元に僅かに微笑みを湛え、背筋をまっすぐ伸ばす居住まいはその中でも際立って美しく見えていることだろう。
私達のクラス、3年A組から順番に1人1人呼名されていく。
返事の仕方、歩き方、卒業証書を受け取る姿まで何度も繰り返して練習させられてきた。
だから淡々と流れる作業のように見えるのに、感動的に見えるのは荘厳なクラシック音楽のせいなのか、感極まっている人達のせいなのか。
後方の保護者席では、スーツ姿の傑兄ちゃんと渉兄ちゃんがスマホを構えながらすでに涙ぐんでいた。
「近江 涼介」
「……はい。」
厳かな雰囲気に合う落ち着いた低音。
飄々と立ち上がり歩く姿は涼やかで、女子達のほぅっと
惚けた息遣いがあちこちから聞こえてきた。
けれども奴はそんなことまるで気にしていない。
存在を認識していないのかと疑わしくなるほどだ。
「卒業おめでとう。」
なんの感慨もないかのように校長が差し出す卒業証書を無表情で受け取る。
そしてゆっくりと全体の方へ振り向くと、視線を落として舞台前で3連並んだ私と広瀬真、榛名聖の方をじっと見た。
その瞼も口も微動だにもしていないのに、人間らしい温度を帯びた視線に感じた。
「今こっち見たねぇ。」
「……見た。けど喋りかけてくるなよ……。」
顰めた榛名聖の声音はとても楽しそうだ。
隣に座る広瀬真は、前を向いたままほとんど口を動かさず苦笑混じりに返事をしている。