姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―
#Epilogue
――3年後。


「ちょっと!なーんーで、まだ誰もいないわけ!?」


忙しそうにたくさんの人が行き交う空港の国際線ターミナル。

そこに一際荒くヒールの音を立てながら、胸の辺りまで伸びた柔らかな黒髪を靡かせ歩く女が1人。


「飛行機の着陸が少し遅れてるらしいな。」


その隣を歩く背の高い黒髪の男は、急ぎ足の女に歩調を合わせているのにその佇まいは涼やかでゆったりとして見える。

目を引く華やかな容姿の男女ペアに、誰もが思わずほぅっと息を吐いて見惚れている中を2人並んで颯爽と過ぎ去っていく。


「久しぶりの再会なのに何やってんのよアイツらは!」

苛立った声が、空港のガラス張りの天井に軽く反響した。

「まだ待ち合わせ10分前だけどな。」

「うるさい!忙しい奴らのためにこの私が日程合わせてやってんのに、一分一秒の遅れも許さないから!」

道の真ん中で立ち止まり、キーッと肩を怒らせ始めた女に黒髪の男は「またこれだ」と眉を顰めて息を吐いた。


「ちょっと〜こんな往来で目立つのやめてくれる〜?
全然忍べないんだけど〜。」


緩やかで脱力した声が背後に迫る。

女が目を吊り上がらせたまま振り返ると、甘やかなキャラメルブラウンの髪色のサングラスをかけた男が大袈裟に困った顔をして立っていた。

「すっかり芸能人気取りってわけ?
無駄よ、この私が顔を晒してる時点で群衆の注目を集めないわけがないから!」

女はフン、と鼻を鳴らして得意げに長い黒髪を手で払う。
洗練されて更に美しくなったその顔立ちが強調されて、人々の視線を益々集めた。

「わーぉ、すっごい自信。相変わらずだねぇ。」

サングラスの奥で色香のある目元がゆるりと下がる。

その後方でクールな表情で壁一面を占領しているカリスマモデルと同じ顔だとは到底思えない脱力感――
まぁそれが本来の彼らしさなのだけど。

到着口を目前にして、そこ一帯が一層華やかに、そして騒がしくなっていく。
広い空港内の一角に人集りができ始める頃、到着口から更に人が溢れ出てきた。


「You're as damn loud as always , “busu”.」


偉そうでぶっきらぼうな声が割り込んできた。
声の主である大きなキャリーケースを引いた派手な金髪の男が、当たり前の様になじみの輪の中に割り込んだ。
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