姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―

「……っふ。」

思わず笑い声が漏れてしまった。
それを聞いたH2O(笑)達が一斉に私を見下ろす。

だから吊り上がりそうな口角を、俯いているうちに押し戻して潮らしい態度を貫いた。


「下手な泣き真似するな。」


無機質なのに嫌悪を剥き出しにした声。

耳に届くその低音の響きは冷たいのに色がある。
それがあまりに威圧的で――……綺麗で。

ずっと震えていた腹筋がピタリと止まって、代わりに心臓の音が聞こえてくるようになった。

「……ごめんなさい。」

“違います、笑っていました”なんて言えるわけもなくて、緊張しつつも眉尻を垂らした上目遣いで黒髪を見つめる。


どうだ見たか、このウルウルでキラキラなお目目を!

泣き真似はみっともないからしないと決めていたけど、勘違いされたからにはやり通してやる。

これで奴らもイチコロ――……
なんて思っていたのに、黒髪の長い足が伸びてきて、黙らせる様に私の頭に着地する。


つまり、このクソ男、足蹴にしたのだ。この私を!


「や、やだぁ。近江くん、悪ふざけが過ぎるんだから……」

「寒気がする、やめろ。」

ピシャリと突き放す一言。

無礼千万にも可愛い笑顔で対応してやったのに、黒髪の眉は僅かに歪んでいる様にも見える。

ワナワナと震える手で頭を抉る足を払おうとすると、よほど触れられたくないのか高速で足が引っ込んでいった。
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