姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―

「“身勝手な我儘”って何!!
自分らしく生きたいって思うのはそんなにダメなことですか!?

一般家庭に生まれた庶民の私には由緒正しい家の事情なんて分かりませんけどねぇ、自分を押し殺さなきゃいけない苦しさくらいはわかりますよ!

広瀬真は!ほんとは見た目も中身もぎゃーぎゃーうるさいし、口悪いし!一人称俺だし!

口ではブスとかバカとか言うけどなんかあると1番に心配してくるおせっかいだし!!

親が決めた好きでもない婚約者の気持ちだって考えるし!!

誰よりも他人に寄り添える、思いやりのあるいい奴なんです!

そんな広瀬真の話を少しも聞かないなんて、
このバカ親がァ!!!」


――言い切った清々しさに、肩で呼吸する息をフンと鼻で荒く切る。


一同唖然。

小娘に怒鳴られるなんて思ってもみなかったのだろう、ぽかんとするバカ父の顔は、シワが薄くなっている。


その隙に乱暴に自分のバッグと広瀬真の手を取り引き上げ立ち上がった。

「行くよ、広瀬真!
こうなったら徹底的に戦ってやるんだから!!」


臨戦態勢を示すようにドタドタと荒い足音を響かせ部屋を出る。

ずっと末席で透明人間になっていた広瀬母の顔がほんの少し生気を取り戻したことには、誰も気づいてはいない。


広瀬真は私に引きずられながらも、部屋を出る間際に父親の方に振り返った。


「改めて話しましょう、父さん。」

その声にもう震えはない。
緊張も迷いもなくなった。


「“俺”はちゃんと戦うことにしました。」


その時の笑顔は、なかなか清々しいものだった、とか……。
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