姫君の憂鬱―悪の姫と3人の王子共―
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「ーーというわけでね、旅館みたいな家にものすごい堅物親父がいてー……!」
休み明けの旧校舎。昼下がり。
榛名聖の淹れたダージリンティーを片手に、仏頂面の私の愚痴を、聞いているんだかいないんだかわからない態度の近江涼介と榛名聖の2人が聞いていた。
「ひーちゃんそんな場所でも啖呵切ってきたの〜?偽装恋人台無しじゃない?」
「ブチギレ体質だな。」
「ハッ……!確かに……!!」
「あんな怖い方、別れた方がいいわ。」とか広瀬母に思われて、やっぱり婚約話が進んじゃった…!?
いやでも、あれくらいなら私の美貌でカバーできるのでは…!ルッキズムって言葉があるくらいだし!
「あはは、相変わらずのすっごい自信〜。」
もはや脳内にツッコミ入れてくるのにも慣れてきた。
ガラッとドアの開く音がして、だるそうに広瀬真が入ってきた。今日もチャラチャラ、耳元で留めたヘアピンが光ってる。
「婚約話、一旦保留になったわ。」
大きな猫目が私を捉えると、突拍子もなくそんなことを言った。
そのまま室内へ進んで、空いていた私の隣の椅子に腰掛ける。
背凭れに深く沈みながら伸びをして、呑気な態度だ。
「コテンパンにやってやったの!?たまにはやるじゃない!」
「俺が……ってよりは珍しく加勢してくれた母親がな。
カッコ悪ぃけど。」
あの優しそうだけど存在感のない広瀬母が?
それはちょっと意外な姿だ。
「――なんなら偽装恋人も最初からバレてたわ、母親に。」
「え゛えっ!?」
じゃあなんだったのよ、前半の茶番は……っていうか私が行く意味、あった?