ウェディングドレス・ウォーリアーズ
彼が布地を扱うちいさなサラサラと言う音だけがする。
ここはとても静謐な空間だ。

銀色の細いレース糸で編んだ花モチーフのパターンを繋げた上半身とシルクのスカート部分の下半身を手縫いで繋げる作業なのだった。
彼はこのひと月、このオーダーメイドのウェディングドレスを作る作業に追われていた。
私が勤めるブライダル専門会社と専属契約をしている彼は、一から全てひとりでウェディングドレスを作る。大学へ行く傍ら、夜、縫製学校に通って資格を取り、卒業後に単独でパリへ渡って修業をした、彼の努力のあらわれだ。

うちの会社では結婚に関する何もかも一切を取り仕切る。結婚式、披露宴にはじまり、お見合いパーティやハネムーン、ドレスや指輪の製作まで。
うちの社長は滅多に会社に顔を出さない代わりに、毎日子会社をまわって教育をほどこしたり、有能な人材を発掘したりするのに余念がない。

今回、うちの会社にウェディングドレスを注文したのは、世界的に有名なウクライナ人のバレリーナだ。この案件を持ち込んだのはうちの3年目の社員だが、そのひとと依頼人の繋がりについては謎で、私たちも詮索する気は一切ない。
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