誰にも言うなよ ~結婚式の後始末~
「若田くん、お疲れ様~」
遠方への外出から遅くなって戻ってきた若田は、ロビーでちょうどみんなと帰ろうとしていた吉本美春と出会った。
……相変わらず、社長によく似た顔だなあ。
社長が女装してるみたいで、なんか緊張しちゃう、と若田は思う。
リアルに社長が女装したら、違う意味で緊張するけど、と若田が思ったとき、明巳のはとこ、美春が笑って言ってきた。
「ねえねえ、若田くん、今日、ロビーで見たことない美女と楽しそうだったんだって?」
「ああ……」
社長の奥様、と言おうとしたが。
どうもほたるは明巳の妻であることを隠したがっている風なので、そこで言葉を止めたのが悪かった。
「あ、口ごもった。
やっぱり、彼女とかなの?」
と美春に追求される。
「えっ? とんでもないですっ」
「若田くん狙ってる子、いっぱいいるのに、みんな残念がってるよ~」
じゃあね、と言って美春は先に行ってしまった仲間を追いかける。
いや、そのいっぱいいる子は何処にいるんですか。
誰にも声かけられないんですけど。
霊なんですか?
と思う若田はただただ鈍いだけだった。