誰にも言うなよ ~結婚式の後始末~
 


 昼休み。
 評判の店でランチをとって戻ってきた美春は、ロビーに若田がいるのに気がついた。

「あら、若田くん、こんにちは」

「あのー、美春さん。
 もうやめてくださいませんか?」
と若田は唐突に言い出す。

 なんの話かと思ったら、明巳とほたるから愛の巣を取り上げようとしていることへの苦情のようだった。

「なんでよ。
 そんなことしたって、あの二人の愛が揺らがないと思ってるんなら、別にいいでしょ」

 だが、若田は、
「いや、なんか今にも揺らぎそうだから言ってるんです」
と言う。

「……じゃあ、いいじゃないのよ」

 そんなのなら、放っといたって別れるわよ、と美春は言い放つ。

「私は引かないわ。
 なんとなく一緒にいるだけなら、住まいを取り上げたら、散り散りになるかもしれないじゃないっ」

「いやあの、ホームレスの人が寄せ集まって暮らしてるんじゃないので……」

 そのとき、横を通った女に美春は鼻で笑われた。
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