誰にも言うなよ ~結婚式の後始末~
「今、呼んできますね」

 たまたま通りかかったからだとほたるに言ってくれっ、と思ったが、松岡はさっと、ほたるーと言いながら、行ってしまう。

 もう~、お前、名前多すぎて、ほんとややこしいんだよっ、と照れ隠しのように明巳は思う。

 松岡が奥からほたるを連れてきてくれるのが、ガラス越しに見えた。

 その姿が見えただけで、なんとなく嬉しくなりながら、出てきたほたるに、
「……お疲れ」
とだけ言う。

「お疲れ様ですっ」
と笑うほたるの顔を見ながら、

 今日、この会社に来てよかったっ、と明巳は思っていた。





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