【シナリオ】この恋、再会だって知らないふり。
13話
第13話:不安と焦りと、好きのあいだ
◇5月下旬。
○大学の図書館自習室。
◇湊、分厚い六法を前に眉間にシワを寄せている。

◆ペンを動かす手は止まりがち。
◆机の端には、優結からもらった小さな音符のキーホルダー。

湊(モノローグ)
「あと3ヶ月で試験本番……」
「落ちたら、ただの“口だけ男”だ」
「――あいつを幸せにする資格、なくなる気がする」


◇数日後・昼休み。法学部棟の前。
◇優結が湊に会いに来て、手を振る。

優結
「湊さ……あ、じゃなくて、湊」
「お昼、一緒に食べない?」

湊(ほんの一瞬、ためらって)
「……ごめん。今日は無理。レジュメ読み込まないと」

◆優結の笑顔が少し曇る。

優結
「うん、わかった。……がんばってね」


◇その後の優結。音大のカフェテリアで、友人と昼食。

友人
「最近、彼氏さんとどう? うまくいってる?」

優結(笑顔をつくって)
「うん、まぁ……ちょっと試験前で忙しいみたい」

友人
「そっか。でも優結、なんか……少し元気ない?」

優結(苦笑しながら)
「私、何もできないなって思って」
「“好き”って気持ちだけじゃ、支えることって難しいね」


◇夜。湊の下宿先。
◇デスクにかじりつくように勉強する湊。

◆スマホの通知。優結から「今日もおつかれさま」のLINE。
◆未読のまま、画面を伏せる。

湊(モノローグ)
「優結と話すと、甘えたくなる。触れたくなる」
「でも今の俺は、それをちゃんと受け止められない」
「恋人としてじゃなく、“試されてる男”としてしか、見られなくなる気がする」


◇翌週。土曜日の午後。
○音大の中庭ベンチ。優結がひとりでヴィオラを弾いている。
◇湊がこっそり近くで立ち止まる。

◆優結の背中は、どこか寂しげで、音も切なげに響いていた。

湊(モノローグ)
「……あいつ、俺のせいで泣きそうな音を出してる」
「こんなんじゃ、何のために頑張ってるかわからない……」


◇その夜。湊から、久々に優結へ通話の着信。

優結(スマホを取り、驚いた声で)
「……湊?」

湊(声に少し力がなくて)
「ごめん、最近ちゃんと話せなくて……。俺、たぶん余裕なかった」

優結(静かに)
「ううん、私こそ……ちゃんと待ててなかった」
「支えたいと思ってたけど、不安になってばかりだった」


◇ふたりの声が、電話越しに静かに重なる。


「……もう少し、頑張らせて」
「今、ちゃんと合格して、ちゃんと横に立ちたい」
「そのために距離を取るようなことがあったら……ごめん」

優結
「私、ちゃんと待つ」
「でも、約束して。心は離さないって」

湊(少し笑って)
「もちろん。心だけは、ずっと君の隣に置いてる」


○その夜、ふたりの部屋。
◇会えないけど、想いは重なった。

優結(モノローグ)
「焦らない。迷わない。大丈夫、ちゃんと信じられる」
「だって、“好き”は静かでも、強く燃えるものだから」
 
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