秘めた恋は、焔よりも深く。
「……わかった。今は、そういうことにしておいておく」

龍之介は低くそう告げると、箸を置いた。
その声音は静かだが、奥底に熱を孕んでいるのが、美咲にも伝わってくる。

美咲は言葉を重ねようとしたが、龍之介の眼差しに遮られた。
射抜くような視線。
心の奥底に潜む嫉妬と独占欲が、隠しきれずに滲み出していた。

食事を終え、テーブルを片付けた美咲が、湯気の立つ湯呑を差し出す。
ふわりと立ち上るお茶の香りに安らぎを覚えたその瞬間。

「美咲」

低い声とともに、背後から腕が伸びてきた。
龍之介の大きな手が、美咲の細い腰を捕らえ、ぐっと自分の方へ引き寄せる。

「……っ」
湯呑が揺れ、危うくこぼれそうになり、慌ててテーブルに置く。

「……どうしても、我慢できない」
かすれた囁きが、美咲の胸を震わせる。

背中を抱き寄せられたまま、身動きの取れない美咲。
耳元に落ちる低い吐息が熱を帯びている。

「……これからは、予定を知らせてほしい」

押し殺したような声。
淡々としているのに、その奥底には燃え上がる嫉妬と独占欲が潜んでいる。

美咲は一瞬、胸の奥がきゅっと掴まれるように感じて、ゆっくりと頷いた。
「……わかりました」

その小さな返事に、龍之介の呼吸がふっと深くなる。
まるで安堵を飲み込むように、彼女をさらに抱きしめた。

「いよいよ明日だ。キャンプを楽しみにしている」
そう言った龍之介の顔は、少年のようにうれしそうだった。
その笑みのまま、美咲の唇をたっぷりと堪能し、名残惜しげに抱きしめてから帰っていった。

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