秘めた恋は、焔よりも深く。
龍之介はスタッフから受け取ったトングを軽やかに操り、殻の中で赤く染まった伊勢海老の身を切り分ける。
白く透き通る身が湯気を立てながらほぐれ、美咲の皿へと移された。
「熱いから気をつけろよ」
「……あの、私の分まで……ありがとうございます。龍之介さんも、ちゃんと召し上がってください」
「いいんだ。取り分けは慣れているんだ」
「え?」美咲が首を傾げると、彼は小さく笑った。
「子供の頃から、姉にあれこれ指図されてな。……自然と身についたんだろうな」
苦笑まじりの声音に、美咲の胸の奥がふっと温かくなる。
以前聞いた“名付けのエピソード”と重なり、龍之介の家族とのつながりが少しずつ形を持ちはじめる気がした。
美咲は思わず笑みをこぼす。
「……お姉さんとは、今も仲がいいんですか?」
龍之介はトングを置き、少し遠くを見やった。
「仲がいい、というより……強いんだよ。昔から俺よりよっぽど。祖母の影響を一番受けてるのも姉だしな」
「ふふ……なるほど」美咲が微笑む。
「美咲には兄弟がいるのか?」
「はい。兄がひとり。6歳上ですから、子供の頃はずいぶん面倒を見てもらいました」
思い出すように目を細める。
「甘やかされてばかりで……今も頭が上がらないんです」
龍之介は彼女を見つめ、ふっと口角を上げた。
「6歳上か……」
低い声でゆっくり言葉を続ける。
「俺はお前の一回り年上だ。……だからもっと大切にするぞ」
「……っ」
美咲の胸が一瞬にして熱を帯び、言葉を失った。
そんな彼女を見て、龍之介が低く笑った。
「なに? “もっと大切にする”って、どうするのか……具体的に聞きたいか?」
わざとからかうように、唇の端を上げる。
「そんなこと……聞きたくありません!」
真っ赤な顔で声を荒げる美咲。
龍之介は愉快そうに目を細め、口角を上げた。
「そうか。じゃあ、行動で示すことにするか。……これでも俺は有言実行の男だからな」
「……もう」
困ったように、けれどどこか甘く響く声で美咲がつぶやく。
その可憐な反応に、龍之介の視線はますます熱を帯びていった。
「さあて、そろそろ部屋に戻って……今日最後の企画を体験するか」
龍之介が楽しげに言う。
「……あ、そうですね。なんなんでしょうね?」
美咲が小首を傾げる。
「さあな。今日だって、直前まで知らされなかったし」
いたずらっぽく目を細め、龍之介はナプキンを畳んで立ち上がる。
部屋に戻った二人は、今朝言われた通りに動きやすい服装へと着替えた。
美咲は小さなポーチを開き、鏡の前でさっと化粧を直す。
頬にほんのり色を足し、髪を軽くまとめると、先ほどまでの夕餉の余韻から切り替わるように、表情が凛と引き締まった。
龍之介はジャケットをハンガーに掛け、腕を軽く回して肩をほぐす。
二人の気配が、次の体験へと向かう準備の空気に変わっていった。
そこへ、コンシェルジュがノックの音を立てて姿を現した。
「黒瀬様、佐倉様。本日最後の体験のため、お迎えにあがりました」
白く透き通る身が湯気を立てながらほぐれ、美咲の皿へと移された。
「熱いから気をつけろよ」
「……あの、私の分まで……ありがとうございます。龍之介さんも、ちゃんと召し上がってください」
「いいんだ。取り分けは慣れているんだ」
「え?」美咲が首を傾げると、彼は小さく笑った。
「子供の頃から、姉にあれこれ指図されてな。……自然と身についたんだろうな」
苦笑まじりの声音に、美咲の胸の奥がふっと温かくなる。
以前聞いた“名付けのエピソード”と重なり、龍之介の家族とのつながりが少しずつ形を持ちはじめる気がした。
美咲は思わず笑みをこぼす。
「……お姉さんとは、今も仲がいいんですか?」
龍之介はトングを置き、少し遠くを見やった。
「仲がいい、というより……強いんだよ。昔から俺よりよっぽど。祖母の影響を一番受けてるのも姉だしな」
「ふふ……なるほど」美咲が微笑む。
「美咲には兄弟がいるのか?」
「はい。兄がひとり。6歳上ですから、子供の頃はずいぶん面倒を見てもらいました」
思い出すように目を細める。
「甘やかされてばかりで……今も頭が上がらないんです」
龍之介は彼女を見つめ、ふっと口角を上げた。
「6歳上か……」
低い声でゆっくり言葉を続ける。
「俺はお前の一回り年上だ。……だからもっと大切にするぞ」
「……っ」
美咲の胸が一瞬にして熱を帯び、言葉を失った。
そんな彼女を見て、龍之介が低く笑った。
「なに? “もっと大切にする”って、どうするのか……具体的に聞きたいか?」
わざとからかうように、唇の端を上げる。
「そんなこと……聞きたくありません!」
真っ赤な顔で声を荒げる美咲。
龍之介は愉快そうに目を細め、口角を上げた。
「そうか。じゃあ、行動で示すことにするか。……これでも俺は有言実行の男だからな」
「……もう」
困ったように、けれどどこか甘く響く声で美咲がつぶやく。
その可憐な反応に、龍之介の視線はますます熱を帯びていった。
「さあて、そろそろ部屋に戻って……今日最後の企画を体験するか」
龍之介が楽しげに言う。
「……あ、そうですね。なんなんでしょうね?」
美咲が小首を傾げる。
「さあな。今日だって、直前まで知らされなかったし」
いたずらっぽく目を細め、龍之介はナプキンを畳んで立ち上がる。
部屋に戻った二人は、今朝言われた通りに動きやすい服装へと着替えた。
美咲は小さなポーチを開き、鏡の前でさっと化粧を直す。
頬にほんのり色を足し、髪を軽くまとめると、先ほどまでの夕餉の余韻から切り替わるように、表情が凛と引き締まった。
龍之介はジャケットをハンガーに掛け、腕を軽く回して肩をほぐす。
二人の気配が、次の体験へと向かう準備の空気に変わっていった。
そこへ、コンシェルジュがノックの音を立てて姿を現した。
「黒瀬様、佐倉様。本日最後の体験のため、お迎えにあがりました」