秘めた恋は、焔よりも深く。
美咲がドレスに袖を通し、鏡の前に立った瞬間、心臓が大きく跳ねた。
肩から背中へと流れる布の落ち感は優雅で、空色のドレスは彼女の肌をいっそう透き通るように見せる。
女性インストラクターに髪をアップにまとめられると、首筋がすらりとあらわになり、自分でも見慣れぬほど華やかな姿になっていた。
「とてもお似合いですよ。きっとお相手も目を見張るはずです」
その言葉に、美咲はますます頬を赤くした。
一方の龍之介も、燕尾服に袖を通す。
長身にぴたりと沿ったジャケットは彼の体格を引き立て、黒の光沢が大人の威厳を際立たせる。
鏡越しに結ばれた蝶ネクタイを眺め、ふっと低く笑った。
「……悪くない」
そして再びダンスホール。
扉が開き、空色のドレスに身を包んだ美咲が現れた。
視線を奪われた龍之介は、一瞬だけ言葉を失う。
「……美咲」
その低い声に、美咲は思わず足を止めた。
次の瞬間、燕尾服姿の彼と目が合い、胸の奥で小さな震えが走る。
「本当に……似合ってる。綺麗だ」
その真剣な眼差しに、美咲は照れ隠しのように小さく会釈する。
インストラクターが微笑みながら二人を促した。
「では、その装いのまま、もう一度ワルツを踊ってみましょう」
再び音楽が流れ始める。
ダンスホールに響いたのは、先ほどよりもゆったりとしたワルツの旋律だった。
龍之介は、燕尾服の袖を少し気にしながら、美咲に手を差し伸べる。
「さあ、お妃よ」
突然の呼びかけに、美咲は驚きで一瞬息を呑む。
「お、お妃って……」
促されるままに美咲は彼の掌に自分の手を重ねるが、裾の長いドレスに足元がおぼつかない。
「わっ……」
小さくつまずきかけた瞬間、龍之介の腕がしっかりと腰を支えた。
「大丈夫だ。俺がいる」
その低い声に、美咲の頬はさらに赤く染まる。
二人はぎこちなくもステップを踏み出した。
龍之介がリードを意識して腕を動かすが、時折タイミングがずれ、美咲の足と彼の靴先が軽く触れ合う。
「す、すみません!」
「いや、俺のほうこそ……」
互いに謝り合いながら、必死で呼吸を合わせようとする。
だが、何度か繰り返すうちに、美咲の動きが少しずつ龍之介のリードに馴染んでいった。
背筋を伸ばし、顔を上げると、視線の先には燕尾服の彼のまなざし。
それだけで、心臓の鼓動が一層速くなる。
「いいですよ、お二人とも」
見守っていた女性インストラクターが拍手を送る。
「初めてなのに、こんなに真剣に呼吸を合わせようとされて……その姿勢がとても素敵です」
褒められて、美咲は少し照れ笑いを浮かべる。
龍之介も、口元に愉快そうな笑みを浮かべながら、彼女の手をぎゅっと握り直した。
美咲と龍之介が、息を合わせるのに必死で何とか踊り終えると、場の空気がふっと和らいだ。
「お疲れさまでした。では、記念に写真を撮りましょう」
インストラクターの声に促され、二人は肩を並べる。
カメラのシャッターが何度か切られると、美咲は自然に笑みを浮かべ、龍之介もその横顔を慈しむように見つめていた。
「実は、先ほどの様子は動画でも撮影しておりました。後日データをお送りしますね」
そう告げられ、美咲は驚きと照れが入り混じった表情になる。
自分のぎこちない姿が映っていると思うと恥ずかしいが、どこか嬉しい。彼と踊った記録が、形として残るのだ。
最後に、インストラクターが二人の前でお手本のワルツを披露してくれた。
優雅で軽やかなステップ、流れるような旋律の中で揺れるドレスの裾。
美咲は息を呑み、まるで夢を見ているかのように見入っていた。
「……きれい……」
無意識に漏れた声は、音楽に溶けて消えていく。
隣で龍之介は、美咲の頬がほんのり染まるのを見逃さなかった。彼女の目に映る憧れと輝きが、自分の胸を熱くする。
この夜の余韻を、どうしても彼女に刻みつけたい。
そんな思いを抱えながら、龍之介は静かに美咲の手を取った。
肩から背中へと流れる布の落ち感は優雅で、空色のドレスは彼女の肌をいっそう透き通るように見せる。
女性インストラクターに髪をアップにまとめられると、首筋がすらりとあらわになり、自分でも見慣れぬほど華やかな姿になっていた。
「とてもお似合いですよ。きっとお相手も目を見張るはずです」
その言葉に、美咲はますます頬を赤くした。
一方の龍之介も、燕尾服に袖を通す。
長身にぴたりと沿ったジャケットは彼の体格を引き立て、黒の光沢が大人の威厳を際立たせる。
鏡越しに結ばれた蝶ネクタイを眺め、ふっと低く笑った。
「……悪くない」
そして再びダンスホール。
扉が開き、空色のドレスに身を包んだ美咲が現れた。
視線を奪われた龍之介は、一瞬だけ言葉を失う。
「……美咲」
その低い声に、美咲は思わず足を止めた。
次の瞬間、燕尾服姿の彼と目が合い、胸の奥で小さな震えが走る。
「本当に……似合ってる。綺麗だ」
その真剣な眼差しに、美咲は照れ隠しのように小さく会釈する。
インストラクターが微笑みながら二人を促した。
「では、その装いのまま、もう一度ワルツを踊ってみましょう」
再び音楽が流れ始める。
ダンスホールに響いたのは、先ほどよりもゆったりとしたワルツの旋律だった。
龍之介は、燕尾服の袖を少し気にしながら、美咲に手を差し伸べる。
「さあ、お妃よ」
突然の呼びかけに、美咲は驚きで一瞬息を呑む。
「お、お妃って……」
促されるままに美咲は彼の掌に自分の手を重ねるが、裾の長いドレスに足元がおぼつかない。
「わっ……」
小さくつまずきかけた瞬間、龍之介の腕がしっかりと腰を支えた。
「大丈夫だ。俺がいる」
その低い声に、美咲の頬はさらに赤く染まる。
二人はぎこちなくもステップを踏み出した。
龍之介がリードを意識して腕を動かすが、時折タイミングがずれ、美咲の足と彼の靴先が軽く触れ合う。
「す、すみません!」
「いや、俺のほうこそ……」
互いに謝り合いながら、必死で呼吸を合わせようとする。
だが、何度か繰り返すうちに、美咲の動きが少しずつ龍之介のリードに馴染んでいった。
背筋を伸ばし、顔を上げると、視線の先には燕尾服の彼のまなざし。
それだけで、心臓の鼓動が一層速くなる。
「いいですよ、お二人とも」
見守っていた女性インストラクターが拍手を送る。
「初めてなのに、こんなに真剣に呼吸を合わせようとされて……その姿勢がとても素敵です」
褒められて、美咲は少し照れ笑いを浮かべる。
龍之介も、口元に愉快そうな笑みを浮かべながら、彼女の手をぎゅっと握り直した。
美咲と龍之介が、息を合わせるのに必死で何とか踊り終えると、場の空気がふっと和らいだ。
「お疲れさまでした。では、記念に写真を撮りましょう」
インストラクターの声に促され、二人は肩を並べる。
カメラのシャッターが何度か切られると、美咲は自然に笑みを浮かべ、龍之介もその横顔を慈しむように見つめていた。
「実は、先ほどの様子は動画でも撮影しておりました。後日データをお送りしますね」
そう告げられ、美咲は驚きと照れが入り混じった表情になる。
自分のぎこちない姿が映っていると思うと恥ずかしいが、どこか嬉しい。彼と踊った記録が、形として残るのだ。
最後に、インストラクターが二人の前でお手本のワルツを披露してくれた。
優雅で軽やかなステップ、流れるような旋律の中で揺れるドレスの裾。
美咲は息を呑み、まるで夢を見ているかのように見入っていた。
「……きれい……」
無意識に漏れた声は、音楽に溶けて消えていく。
隣で龍之介は、美咲の頬がほんのり染まるのを見逃さなかった。彼女の目に映る憧れと輝きが、自分の胸を熱くする。
この夜の余韻を、どうしても彼女に刻みつけたい。
そんな思いを抱えながら、龍之介は静かに美咲の手を取った。