秘めた恋は、焔よりも深く。
カーテンの隙間から、やわらかな朝の光が差し込んでいた。
まどろみの中で、美咲は静かに目を開ける。
隣には、安らかな寝息を立てる龍之介の姿。
大きな胸に頬を寄せていると、その鼓動がゆったりと伝わってきて、昨夜の熱がふたたび胸の奥に蘇る。
夢じゃない。
彼に抱きしめられ、何度も名前を呼ばれた夜。
あの甘い声も、強く温かな腕も、すべて現実だった。
美咲はそっと身じろぎし、龍之介の寝顔を見上げた。
長い睫毛の影、眉間の皺のない穏やかな表情。
いつも会社で見せる厳しい顔とは違う、その無防備な姿に胸が締めつけられるような愛しさが込み上げてくる。
しばらくその寝顔を眺めてから、美咲は音を立てぬよう静かにベッドを抜け出した。
テラスには、届けられたばかりのコーヒーが置かれている。
湯気の立つカップを手に取り、そっと目を閉じて香りを吸い込む。
深く息を満たすと、心の奥まで澄んでいくようだった。
「……朝の空気って、なんて気持ちが良いのかしら」
思わず小さくつぶやき、幸福感に頬がゆるむ。
澄み渡る空と鳥のさえずりに包まれながら、美咲は自分が確かに「愛されている」ことを感じていた。
龍之介が目を覚ますと、隣は空だった。
シーツに美咲のぬくもりはもうなく、わずかな香りだけが残っている。
「……美咲?」
低く呼びかけても、返事はない。
ゆっくりと上体を起こし、床に足をつけた瞬間、ひやりとした空気が肌を撫でた。
少しの寒さを覚え、傍らにあったパーカーを羽織る。
まだ眠気の残る頭を振り払いながら、彼は部屋を見渡した。
姿の見えない美咲を求めて、静かに歩き出す。
やがて、ガラス扉の向こうに差し込む光に、ふと足が止まった。
朝のテラス。
カップを両手に包み込み、うっすらと目を閉じた美咲が、朝の風に髪を揺らしている。
その横顔は、夜の艶めきとは違う、清らかで静謐な輝きに包まれていた。
龍之介はしばし立ち尽くした。
息を呑むほど、美しい。
言葉にならぬ想いを抱えながら、彼はそっと扉を開け、光の中の彼女へと歩み寄った。
ガラス扉をそっと開け、朝の光の中へ歩み出た龍之介。
テラスでコーヒーを味わう美咲の背に近づき、静かに声をかけた。
「……おはよう」
振り返った美咲の唇が、ふっとやわらかくほころぶ。
「おはよう」
いつもなら「おはようございます」と口にしていたはずなのに、今朝は違った。
意識して敬語をやめたその一言に、二人の距離がぐっと近づく。
龍之介は目を細め、言葉以上の意味をその響きから感じ取った。
彼女の変化がうれしくて、胸の奥が温かく満たされていく。
龍之介はその響きに満足げに目を細め、そっと問いかけた。
「よく眠れたのか?」
「うん、朝までぐっすりよ」
頬を染めながらも、はにかんだ笑顔で答える美咲。
美咲はカップを手に取り、コーヒーを龍之介へ差し出した。
「今日でこの企画も終わるのね」
満足げな微笑みを浮かべながらつぶやく。
「そうだな。……また来ようか?」
龍之介の穏やかな声に、美咲は小さく頷いた。
「いつかね」
カップを口に運びながら、美咲は思い出したように問いかける。
「そういえば、チェックアウトは夕方なのよね」
「そうだ。まだ一つ、仕事が残っているからな」
「今日の体験は何かしら?」
興味深そうに身を乗り出す美咲に、龍之介は肩をすくめる。
「さあな。……ここまでくると、何でも来い!って感じだな、俺は」
二人は顔を見合わせ、同時に笑みをこぼした。
朝の光の中で響く笑い声は、何よりも幸福の証のようだった。
まどろみの中で、美咲は静かに目を開ける。
隣には、安らかな寝息を立てる龍之介の姿。
大きな胸に頬を寄せていると、その鼓動がゆったりと伝わってきて、昨夜の熱がふたたび胸の奥に蘇る。
夢じゃない。
彼に抱きしめられ、何度も名前を呼ばれた夜。
あの甘い声も、強く温かな腕も、すべて現実だった。
美咲はそっと身じろぎし、龍之介の寝顔を見上げた。
長い睫毛の影、眉間の皺のない穏やかな表情。
いつも会社で見せる厳しい顔とは違う、その無防備な姿に胸が締めつけられるような愛しさが込み上げてくる。
しばらくその寝顔を眺めてから、美咲は音を立てぬよう静かにベッドを抜け出した。
テラスには、届けられたばかりのコーヒーが置かれている。
湯気の立つカップを手に取り、そっと目を閉じて香りを吸い込む。
深く息を満たすと、心の奥まで澄んでいくようだった。
「……朝の空気って、なんて気持ちが良いのかしら」
思わず小さくつぶやき、幸福感に頬がゆるむ。
澄み渡る空と鳥のさえずりに包まれながら、美咲は自分が確かに「愛されている」ことを感じていた。
龍之介が目を覚ますと、隣は空だった。
シーツに美咲のぬくもりはもうなく、わずかな香りだけが残っている。
「……美咲?」
低く呼びかけても、返事はない。
ゆっくりと上体を起こし、床に足をつけた瞬間、ひやりとした空気が肌を撫でた。
少しの寒さを覚え、傍らにあったパーカーを羽織る。
まだ眠気の残る頭を振り払いながら、彼は部屋を見渡した。
姿の見えない美咲を求めて、静かに歩き出す。
やがて、ガラス扉の向こうに差し込む光に、ふと足が止まった。
朝のテラス。
カップを両手に包み込み、うっすらと目を閉じた美咲が、朝の風に髪を揺らしている。
その横顔は、夜の艶めきとは違う、清らかで静謐な輝きに包まれていた。
龍之介はしばし立ち尽くした。
息を呑むほど、美しい。
言葉にならぬ想いを抱えながら、彼はそっと扉を開け、光の中の彼女へと歩み寄った。
ガラス扉をそっと開け、朝の光の中へ歩み出た龍之介。
テラスでコーヒーを味わう美咲の背に近づき、静かに声をかけた。
「……おはよう」
振り返った美咲の唇が、ふっとやわらかくほころぶ。
「おはよう」
いつもなら「おはようございます」と口にしていたはずなのに、今朝は違った。
意識して敬語をやめたその一言に、二人の距離がぐっと近づく。
龍之介は目を細め、言葉以上の意味をその響きから感じ取った。
彼女の変化がうれしくて、胸の奥が温かく満たされていく。
龍之介はその響きに満足げに目を細め、そっと問いかけた。
「よく眠れたのか?」
「うん、朝までぐっすりよ」
頬を染めながらも、はにかんだ笑顔で答える美咲。
美咲はカップを手に取り、コーヒーを龍之介へ差し出した。
「今日でこの企画も終わるのね」
満足げな微笑みを浮かべながらつぶやく。
「そうだな。……また来ようか?」
龍之介の穏やかな声に、美咲は小さく頷いた。
「いつかね」
カップを口に運びながら、美咲は思い出したように問いかける。
「そういえば、チェックアウトは夕方なのよね」
「そうだ。まだ一つ、仕事が残っているからな」
「今日の体験は何かしら?」
興味深そうに身を乗り出す美咲に、龍之介は肩をすくめる。
「さあな。……ここまでくると、何でも来い!って感じだな、俺は」
二人は顔を見合わせ、同時に笑みをこぼした。
朝の光の中で響く笑い声は、何よりも幸福の証のようだった。