秘めた恋は、焔よりも深く。
「それで、黒瀬さん。先ほどのことなんですけど……」
個室に運ばれた肉を前に、思い切って口を開いた。
龍之介は一瞬黙り、グラスをテーブルに置くと、落ち着いた声で言った。
「そうだな。結論から言えば――」
美咲の心臓が、どくんと大きく脈打つ。
「俺と美咲は、今日から恋人同士だってことだ」
「……っ!」
思わず箸を取り落としそうになり、美咲は慌てて手を押さえた。
「え、あの……ちょ、ちょっと待ってください。いま、なんて?」
「聞き間違いじゃない」
龍之介は静かに微笑みながら、じっと見つめてくる。
「俺と美咲は、恋人同士だってことだ」
「こ、恋人同士……?」
動揺のあまり、声が震える。
「そんな……急に、どうして……」
「さっきから俺と一緒に手をつないで、ここまで来ただろう」
「それは……!」
言い訳を探すように口を開きかけるが、彼の視線に射すくめられ、言葉が出てこない。
龍之介は肉を網にのせながら、さらりと続けた。
「これからは、俺が隣にいるのが当たり前になる。……覚悟しておいてくれ」
断言する声に、美咲は思わず息をのんだ。
「……っ」
唖然として固まった彼女に、龍之介がわずかに笑みを深める。
「なあ、嫌か?」
「……嫌じゃないですけど」
小さな声で答えると、すぐに返ってくる。
「けど、なに?」
「このキャンプ……仕事ですよね?」
絞り出すように言った美咲の声は、かすかに震えていた。
「仕事でもある」
龍之介はさらりと言い放つ。
「だったら……ふりだけで、キャンプ場でやればいいと思うんですけど」
美咲は勇気を振り絞ってそう告げた。
けれど、龍之介は微動だにせず、むしろ目を細めて笑う。
「ふり、ね」
低い声が、どこか愉快そうに響いた。
「君はそう言うだろうと思ったよ。でもな、美咲、俺はふりなんて器用なことはできない」
「……っ」
喉が詰まる。
「キャンプ場だけ? そんな区切り、俺にあると思うか?」
「でも……仕事のための企画なんですから」
必死に理屈を探す美咲に、彼は淡々と答えた。
「ふりなんかじゃない。俺は本気だ」
真正面からぶつけられた視線に、美咲の喉が詰まる。
理性で押さえつけようとしても、胸の奥で高鳴る鼓動は止められなかった。
「……そんなふうに言われても、困ります」
ようやく絞り出した言葉は、反発のはずだった。
けれど、自分の声がかすかに震えていることに、美咲自身が一番気づいていた。
熱を帯びた頬を隠そうと伏せた視線の先で、グラスの中の泡が静かに弾けていく。
龍之介は彼女を見つめたまま、ゆるやかに口角を上げた。
「君の心は、表情にすぐ映るんだな」
「……からかわないでください」
声はかすかに震え、抗議の響きよりも照れの色が濃かった。
龍之介の目元がいっそう柔らかくなる。
「からかってなんかいない。むしろ、愛おしいと思ってる」
言葉と共に落ちてくる視線に、美咲の胸はさらに乱れていった。
個室に運ばれた肉を前に、思い切って口を開いた。
龍之介は一瞬黙り、グラスをテーブルに置くと、落ち着いた声で言った。
「そうだな。結論から言えば――」
美咲の心臓が、どくんと大きく脈打つ。
「俺と美咲は、今日から恋人同士だってことだ」
「……っ!」
思わず箸を取り落としそうになり、美咲は慌てて手を押さえた。
「え、あの……ちょ、ちょっと待ってください。いま、なんて?」
「聞き間違いじゃない」
龍之介は静かに微笑みながら、じっと見つめてくる。
「俺と美咲は、恋人同士だってことだ」
「こ、恋人同士……?」
動揺のあまり、声が震える。
「そんな……急に、どうして……」
「さっきから俺と一緒に手をつないで、ここまで来ただろう」
「それは……!」
言い訳を探すように口を開きかけるが、彼の視線に射すくめられ、言葉が出てこない。
龍之介は肉を網にのせながら、さらりと続けた。
「これからは、俺が隣にいるのが当たり前になる。……覚悟しておいてくれ」
断言する声に、美咲は思わず息をのんだ。
「……っ」
唖然として固まった彼女に、龍之介がわずかに笑みを深める。
「なあ、嫌か?」
「……嫌じゃないですけど」
小さな声で答えると、すぐに返ってくる。
「けど、なに?」
「このキャンプ……仕事ですよね?」
絞り出すように言った美咲の声は、かすかに震えていた。
「仕事でもある」
龍之介はさらりと言い放つ。
「だったら……ふりだけで、キャンプ場でやればいいと思うんですけど」
美咲は勇気を振り絞ってそう告げた。
けれど、龍之介は微動だにせず、むしろ目を細めて笑う。
「ふり、ね」
低い声が、どこか愉快そうに響いた。
「君はそう言うだろうと思ったよ。でもな、美咲、俺はふりなんて器用なことはできない」
「……っ」
喉が詰まる。
「キャンプ場だけ? そんな区切り、俺にあると思うか?」
「でも……仕事のための企画なんですから」
必死に理屈を探す美咲に、彼は淡々と答えた。
「ふりなんかじゃない。俺は本気だ」
真正面からぶつけられた視線に、美咲の喉が詰まる。
理性で押さえつけようとしても、胸の奥で高鳴る鼓動は止められなかった。
「……そんなふうに言われても、困ります」
ようやく絞り出した言葉は、反発のはずだった。
けれど、自分の声がかすかに震えていることに、美咲自身が一番気づいていた。
熱を帯びた頬を隠そうと伏せた視線の先で、グラスの中の泡が静かに弾けていく。
龍之介は彼女を見つめたまま、ゆるやかに口角を上げた。
「君の心は、表情にすぐ映るんだな」
「……からかわないでください」
声はかすかに震え、抗議の響きよりも照れの色が濃かった。
龍之介の目元がいっそう柔らかくなる。
「からかってなんかいない。むしろ、愛おしいと思ってる」
言葉と共に落ちてくる視線に、美咲の胸はさらに乱れていった。