すき、という名前の花
もうこの世界には、「ありがとう」と口に出して言う人もいなければ、
それを聞いて笑顔になる人もいない。

それが、当たり前の毎日。

そんな世界で――もう一つ、なくなってしまったものがある。

それは、「名前」。

人々は今、自分の名前すら持たない。
それは個性を消すことで、心の波を小さくするため。

自分が誰なのか。
他の誰かと、どう違うのか。

そんなことを考える人さえ、いなくなった。

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