わたしの気持ち知ってるくせに。
いくらアピールしても君は気づかないふりをする。
なんで気づかないふりするの?
わたしの気持ち知ってるくせに。
花火を見つめる君の横顔がオレンジ色の光に照らされる。
それを見るだけでわたしの胸はキュッと締め付けられて。
「どうしたの?」
そう言って心配そうな表情を浮かべる君が憎いよ。
最初は好きと憎しみがイコールだなんて気づいてなかった。
「美瑠??」
「ねぇ、咲也」
頭上で花火が大きく花開く。
わたしは咲也の瞳を真っ直ぐに見つめる。
瞳の中に、金魚柄の浴衣を着た髪を纏めた
わたしが映っていた。
今日のために精一杯お洒落してきたんだよ。
勇気を振り絞って咲也の手を握る。
「え?」
「咲也はわたしの気持ちに気づいてるんでしょ?」
咲也は微かに目を見開いて、気まずそうに顔を逸らした。
「ごめん……」と握った手が離れていく。
ごめんって何さ。
「なんで気づかないふりするの。
わたしの気持ち知ってるくせに!
咲也に好きな人いるのはわかってる!
だけど、そうやってわたしの気持ちから
目を逸らされるのは辛いよっ……!」
どうして。
咲也、どうしてわたしじゃないの?
堪えきれなかった涙が一筋頬を伝った。
咲也は苦しげに顔を歪ませ唇を引き絞る。
なんで、そんな顔するの。
わたしまで辛くなるじゃん。
「ごめん……。美瑠の言う通りだな。
俺、本当はお前の気持ちに気づいてた……。
だけど、俺は花先輩が好きで……。
だから曖昧な態度を取ってしまった。
優しいお前を傷つけたくなくて。
でも、結局は美瑠を傷つけてしまった。
ごめん」
やっぱり、咲也はずるい。
そんな顔されたら文句も言えなくなっちゃう。
「わたし、咲也のことが好きだった」
「うん」
「だから、ちゃんとわたしのことを振って
終わらせてよ」
つくり笑いを浮かべる。
うまく笑えているかな?
「……美瑠」
「大丈夫! わたし、咲也より良い人見つけるから!
だから、もう気を遣わなくていいから」
本当は大丈夫なんかじゃない。
心臓をナイフで抉られたみたいな痛みが
わたしを襲って心の中のわたしが泣き叫んでる。
「でも……」
「わたしを振らないと、お姉ちゃんとは
付き合えないよ。それでもいいの?」
わたしの言葉に咲也は顔を上げて
泣きそうな表情を浮かべた。
何度も小さく頷きながら言葉を紡ごうとする。
頑張れ、咲也。
「ご、ごめん。美瑠」
咲也なりの精一杯の振り台詞。
「よくできました!」
ニカっと笑って咲也の頭をグシャグシャにする。
「ごめん、本当にごめんな」
いつも明るいのに、ほんと義理には厚いんだから。
「咲也ー!美瑠ー! どうしたの?」
お姉ちゃんが駆け寄ってきた。
ここからは咲也とお姉ちゃんだけの舞台だ。
「ごめん、お姉ちゃん、ちょっとお腹痛くなっちゃった。
わたし、もう帰るね!」
「あっ、ちょっと……」
お姉ちゃんの声も振り切って走る。
涙が風に乗って流れていく。
さよなら、咲也。
わたしの好きな人。
わたしの気持ち知ってるくせに、
どうせ、咲也はお姉ちゃんと付き合うんだ。
そう思うと何だか全部馬鹿らしくなって
立ち止まる。
乾いた笑みが夜道に響いた。
好きだった。
好きだったんだよ、本当に。
君との未来を希ってやまなかった。
わたしと合うのは君しかいないって思ってた。
だけど、君とわたしの運命の人は違ったみたい。
嗚咽が漏れて、必死に口元を押さえた。
夜の空に上がる花火がとても綺麗で、儚くて
憎たらしかった。
(終わり)
なんで気づかないふりするの?
わたしの気持ち知ってるくせに。
花火を見つめる君の横顔がオレンジ色の光に照らされる。
それを見るだけでわたしの胸はキュッと締め付けられて。
「どうしたの?」
そう言って心配そうな表情を浮かべる君が憎いよ。
最初は好きと憎しみがイコールだなんて気づいてなかった。
「美瑠??」
「ねぇ、咲也」
頭上で花火が大きく花開く。
わたしは咲也の瞳を真っ直ぐに見つめる。
瞳の中に、金魚柄の浴衣を着た髪を纏めた
わたしが映っていた。
今日のために精一杯お洒落してきたんだよ。
勇気を振り絞って咲也の手を握る。
「え?」
「咲也はわたしの気持ちに気づいてるんでしょ?」
咲也は微かに目を見開いて、気まずそうに顔を逸らした。
「ごめん……」と握った手が離れていく。
ごめんって何さ。
「なんで気づかないふりするの。
わたしの気持ち知ってるくせに!
咲也に好きな人いるのはわかってる!
だけど、そうやってわたしの気持ちから
目を逸らされるのは辛いよっ……!」
どうして。
咲也、どうしてわたしじゃないの?
堪えきれなかった涙が一筋頬を伝った。
咲也は苦しげに顔を歪ませ唇を引き絞る。
なんで、そんな顔するの。
わたしまで辛くなるじゃん。
「ごめん……。美瑠の言う通りだな。
俺、本当はお前の気持ちに気づいてた……。
だけど、俺は花先輩が好きで……。
だから曖昧な態度を取ってしまった。
優しいお前を傷つけたくなくて。
でも、結局は美瑠を傷つけてしまった。
ごめん」
やっぱり、咲也はずるい。
そんな顔されたら文句も言えなくなっちゃう。
「わたし、咲也のことが好きだった」
「うん」
「だから、ちゃんとわたしのことを振って
終わらせてよ」
つくり笑いを浮かべる。
うまく笑えているかな?
「……美瑠」
「大丈夫! わたし、咲也より良い人見つけるから!
だから、もう気を遣わなくていいから」
本当は大丈夫なんかじゃない。
心臓をナイフで抉られたみたいな痛みが
わたしを襲って心の中のわたしが泣き叫んでる。
「でも……」
「わたしを振らないと、お姉ちゃんとは
付き合えないよ。それでもいいの?」
わたしの言葉に咲也は顔を上げて
泣きそうな表情を浮かべた。
何度も小さく頷きながら言葉を紡ごうとする。
頑張れ、咲也。
「ご、ごめん。美瑠」
咲也なりの精一杯の振り台詞。
「よくできました!」
ニカっと笑って咲也の頭をグシャグシャにする。
「ごめん、本当にごめんな」
いつも明るいのに、ほんと義理には厚いんだから。
「咲也ー!美瑠ー! どうしたの?」
お姉ちゃんが駆け寄ってきた。
ここからは咲也とお姉ちゃんだけの舞台だ。
「ごめん、お姉ちゃん、ちょっとお腹痛くなっちゃった。
わたし、もう帰るね!」
「あっ、ちょっと……」
お姉ちゃんの声も振り切って走る。
涙が風に乗って流れていく。
さよなら、咲也。
わたしの好きな人。
わたしの気持ち知ってるくせに、
どうせ、咲也はお姉ちゃんと付き合うんだ。
そう思うと何だか全部馬鹿らしくなって
立ち止まる。
乾いた笑みが夜道に響いた。
好きだった。
好きだったんだよ、本当に。
君との未来を希ってやまなかった。
わたしと合うのは君しかいないって思ってた。
だけど、君とわたしの運命の人は違ったみたい。
嗚咽が漏れて、必死に口元を押さえた。
夜の空に上がる花火がとても綺麗で、儚くて
憎たらしかった。
(終わり)