子を奪われた私が、再婚先の家族に愛されて、本当の母になるまで
第一章:冷遇と喪失の果てに




 ──母になることすら、許されなかった私。

 春のはずなのに、窓の外に咲く桜はどこか色褪せて見えた。
 ほんの少しだけ開けられた格子窓から差し込む光は冷たく、部屋の中の空気も澱んでいる。

 柔らかな布団に寝かされているはずの身体は、鉛のように重かった。
 腹部には、まだ鈍く残る痛みと、微かな空虚があった。

 ──ああ、私は……。

 目を閉じれば、つい数時間前の記憶が浮かぶ。
 血と汗にまみれ、悲鳴のように響いた産声。
 医師でもなく、助産師でもない冷ややかな侍女たちが周囲を囲む中、私は息子を産んだ。

 愛されたわけでもない男の子を、侯爵家という家の後継ぎのためだけに。

 それでも、生まれたばかりの小さな命がこの胸に抱かれたとき、私は初めて震えた。
 あの子は……温かくて、小さくて、ふわりとした花の香りがして、まるで春そのもののようだった。



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