子を奪われた私が、再婚先の家族に愛されて、本当の母になるまで
そんなある日だった。
寒さが日に日に厳しくなっていたある朝、
修道院の扉に、客人が訪れた。
「領主様のお遣いです。院長殿に、お話がございます」
黒いコートに身を包んだ騎士が、礼を失することなく丁寧に告げる。
私とは関係のない話だと思っていた。
ところが、修道院長は私の名を呼び、こう言った。
「リシア様。……少しだけ、お時間をいただけますか?」
そしてその日。
修道院の奥の小部屋で、私は一人の男と向き合うことになる。
冷たい灰色の瞳と、厳格な軍服。
けれどどこか、人の痛みを知っているようなまなざしを持つ人。
彼の名は――
エルヴァン・ヴォルディア。
領地を治める若き領主であり、未亡人となったまま子どもを育てる父だった。
「政略のため、妻を必要としている」
「ただし、あなたの過去はすでにすべて承知している」
「私はあなたを、無理に縛ろうとは思わない。だが……あなたに、子どもたちの“母”になってほしい」
それが、私と彼の再婚話の始まりだった。


