子を奪われた私が、再婚先の家族に愛されて、本当の母になるまで
──季節が巡り、秋になった。
侯爵家からの離縁状が突きつけられたのは、私が産後の床からようやく立ち上がれるようになった頃だった。
「役目は果たした。おまえにもう用はない」
それだけの言葉だった。
あまりにも簡潔で、心を刺す隙間さえ与えられない冷たさだった。
着の身着のまま、侍女に手を引かれ、屋敷を追い出された。
生まれて初めて、行き場のない孤独に震えた。
実家に戻ることは許されなかった。
「恥さらしを連れ戻す気はない」と父は言ったそうだ。
継母は、心底嬉しそうに笑っていたという。
何もかもを失った私は、ただひとり、馬車で降ろされた地方の街で、雨の中に立ち尽くしていた。
「もう……誰も……いらない」
そう口にしたとき、私は本当に“無”になったのかもしれない。
愛されたことも、愛したことも──
すべて夢だったのだと、思おうとした。