断罪するのは悪女である私です
 冷たい、怖い、寂しい。

 だれか助けて。

 終わりが見えないの。




「厄災の魔女メアリー・ターレンバラ。一族を呪い、我が帝国を滅ぼそうとした罪で貴様を処刑する」



 木槌の音が鳴り響き、メアリーの手に枷がつけられたのは昨日のことである。

 『厄災の魔女が人間の治める帝国を滅ぼす』

 そのような予言が下されたのは一年前のことであり、メアリーは『魔女』として処刑されることになってしまったのだ。

 ただ失望した瞳で牢屋の窓から月を眺めるメアリー。背の裏まで伸びた彼女の銀髪は、月光に照らされオパールのように輝いている。

 肌は雪花のように白く、瞳は琥珀色。
 整った顔は蝋人形のよう。
 彼女の姿を見た者は口を揃えてこう言うだろう。
 
 美しい……と。

 静かで冷たい独房の中で、ただ一人運命を呪うメアリーの前に現れたのは、華やかな黄色のドレスをまとった女性である。

 長くウェーブがかった金髪。透き通った瞳は虹色。まさに美女と呼ぶべき姿だが、メアリーとは似ても似つかない。

「あぁ、悲しいわ。まさかターレンバラに汚らわしい魔女が居ただなんてね。しかも娘だなんて」

「お義母(かあ)様。つまらない嘘で聖人面をするのは、おやめになったら?」

「うそ? この私が嘘ですって?」

 メアリーの義母であるフィネラは、可愛らしく首をかしげながら聞き返す。

「裁判長はターレンバラの使用人や兄の気が触れたり、目が充血した様子を見て、魔女である私が呪いをかけたとおっしゃったけど、実際はお義母様が全て仕組んだのでしょう?」

「なにを言っているのか分からないわ。あぁ、可哀想な子。きっと悪魔に心を蝕まれたのね」

「可哀想なのは貴方の方よ。まず皆の体調が、おかしくなったのはお義母様が毒を盛ったから。使われた毒は……ベラドンナ、マンドラゴラ、トリカブトってところね」

「メアリー、本当に私が犯人だと思うなら、法廷で証言すれば良かったのに」

「えぇ、全て証言したわ。だけど無理だった。なぜならば銀髪は不吉の象徴だって迷信があるから」

 牢屋に風が入り、メアリーの銀髪がなびく。

「そう、残念ね」

「残念だなんて微塵も思ってないでしょう? 今まで散々、私を騙して利用してきたくせに……いざ、邪魔になったら排除するのね」

 メアリーの小さな声が届いていないフィネラは、表情ひとつ変えず話続ける。

「でも安心して。魔女の処刑は昔から火あぶりだって決まっているけど、貴方は特別にギロチンにして貰えるみたいだから」

 フィネラはニッコリ微笑みながら、牢屋の前から立ち去る。



「さようなら、メアリー。今まで役に立ってくれてありがとう。貴方に哀れな人間どもの末路を見せられないのが残念だわ」


 メアリーは喚くこともなく、ただ自身に濡れ衣を着せ、処刑に導いた張本人を見つめていた。

 変ね、憎しみが湧かないわ。ただ胸の内で眠るのは悲しみと失望だけ。

 今度は全身を黒ローブで包まれた男が姿を現す。

「レディ・メアリー。君は……悔しくないのかな?」

 メアリーは男を見上げながら淡々と答えた。

「もちろん悔しいわ。だけど、これ以上、私になす術はないもの。強いて言うなら偽の魔女を処刑したことで我が国が滅ぶ様を見られないことが残念ね」

「へぇー、君一人じゃなんとかできないのなら僕が力を貸してあげよう」

 男はフードの下でニヤケてから、砂時計を取り出した。

「もし時間を巻き戻せるとしたら君は何をやりたい?」

 メアリーは目を閉じて、考える素振りを見せる。ちょこんと座りながら、静かに熟考する彼女の姿はマリオネットのようであった。

「そうね、もし時間を巻き戻せるなら私……良い子をやめるわ」

「へぇ……」

「今まで、お義母様から『良い子にしていなさい』と言われていたから、彼女の命令はなんでも聞いたし、髪の毛だって染めてきた。だけど、もし二度目の人生があるなら良い子なんてやめたいの」

 男はニヤケながらローブの下から、小さなネックレスを取り出した。

 ネックレスの先には小さな砂時計がつけられていて、ガラスの中では虹色の液体が流動している。

「いいね、気に入ったよ。僕が時間を巻き戻してあげよう。代わりに面白いものを見せてくれ」

「どうして私なんかを助けてくれるの。今までお義母様の命令に従って人を傷つけてきた私なんかを」

「だからこそだよ。あの女に『本物』を見せてやるんだ」

 あぁ、分かった。
 貴方の求めていることが。
 メアリーは小さく笑いながら、優雅に立ち上がった。

 もうメアリーの中に絶望と諦めなど存在しない。
 あるのは愉悦と希望だけ。

「いいわ。お望み通り見せてあげる生まれ変わった私の復讐劇を」

 お義母様。覚悟はよろしくて?
 私はもう貴方のお人形ではないわ。
 本物の悪女よ。
 貴方に復讐恐ろしい悪女になるの。

 砂時計がひっくり返され、時間が巻きもどる。

 最後に男がフードを外し、素顔を見せる。
 メアリーと同じ銀髪に、蝋人形のごとく整った顔。緑色の瞳は虹色の光沢を放っている。

 人間だとは思えないほどの美貌。

「さぁ、全てを変えてくれ。君の人生と、帝国の運命を」


***


 朦朧とした意識の中で記憶が蘇る。

 本当に無意味な人生だった。

 己の容姿を、才能を、全てあの傲慢な継母に捧げてきたのだから。


 メアリーには物心着いたときから実母はいなかった。代わりにいつも子守唄を聞かせてくれたのがフィネラだ。

 昔から女神のようだと持て囃されるフィネラを、メアリーは信じて疑わなかった。

 彼女のためなら私はなんでもすることができた。

 悪評、毒、冤罪、ありとあらゆる手を使ってメアリーは、フィネラの邪魔者を排除してきた。

 あれは、フィネラの悪評を広めるラングスレッタ子爵を唆して、社交界の星から引きずり落とそうとした日のこと。

 ラングスレッタ家の舞踏会に参加したメアリーは子爵と接触しようとしたが叶わなかった。なぜならば、彼の娘であるグリンダ・ラングスレッタに呼び止められたからだ。

「貴方、利用されているのよ。どうして気づかないの?」

「お義母様が私を利用? 笑わせないで」

 グリンダは軽蔑するような眼差しをメアリーに向けてから立ち去った。

「きっと貴方は、これかも彼女の言われるがままに帝国内部を食い荒らし続けるでしょうね……醜い魔女」


――始末するべき獲物が増えちゃったわね。


 グリンダが残した最後の言葉により、メアリーの中で疑問が生じた。

 お義母様に利用されている?

 彼女の言葉は本当なのかしら?

 フィネラの望み通りラングスレッタ家を没落させた後、メアリーは義母についてあれこれ調べるようになる。

 もしかして私は償っても償いきれないほどの罪を犯してきたかもしれないわ。

 メアリーが真実に気づき始めた頃、突如、屋敷にやってきた王室騎士団に捕らえられることとなる。

「ウィリアム公爵閣下の命令で貴様を捕らえに来たぞ。厄災の魔女!」
 
 拘束され、牢に送られることとなったメアリー。その様子をフィネラは、ほくそ笑みながら。


***

 すっかり日が登りきったごろ。

 全身が冷や汗まみれになったメアリーは、目を覚ました。

 メイドに髪をブラッシングさせて、モーニングティーを飲む。

「おはようございます、お嬢様。朝の紅茶をお持ち致しました」

「ありがとう。今日は何日かしら?」

「帝国歴1901年6月3日でございます」

 寝起きで、まだ重いまぶたを指で擦りながら質問すると、侍女(ウェイティングメイド)は、笑顔で答えた。
 百合柄のティーカップに、並々と紅茶が注がれる。香ばしい茶葉の匂いが鼻腔をくすぐった。

「そう、もう下がっていいわ」

「はい、お嬢様。では染め粉と着替えをお持ち致しますね」

「染め粉は要らないわ。着替えだけちょうだい」

 侍女の笑顔に僅かな困惑が混じる。
 無理もない。今まで一日も欠かさず銀髪を、茶色に染めてきたのだ。
 いきなり「要らない」と言われたら、困惑するに決まっている。
 
 サイドテーブルに置かれた紅茶を、飲みながらメアリーは、ほくそ笑む。

 どうやら、あの男が言っていたことは本当みたいね。時間が巻き戻っている。

 メアリーが魔女裁判で有罪判決を受けたのは、十八歳の六月三日。

 今の年齢は十七歳。

 ちょうど、一年分時間が戻っている。

 まぁ、いいわ。復讐を成すには十分。

 さて、どうやって復讐してやろうかしら?

 ただ殺すだけなんて生ぬるいわ。

 あの女が産まれてから犯してきた全ての悪事。余すことなく世に知らしめて、世間から居場所を奪ってやりましょう。


***


 ドレスのスカートと靴は深紅。
 オパールがはめ込まれた髪飾りは、銀髪の美しさを引き立てるためのアクセントだ。
 メイドに用意させたドレスと、アクセサリーを身につけたメアリーは鏡を見ながら得意げに笑っていた。

 朝食を取るために廊下に出ると、兄のイセルとすれ違った。

「メアリー、お前、その髪はどうした?」

「どうしたもなにも……これが私の自毛よ」

「お父様や、お義母様に見られたらタダじゃ済まないぞ」

「それがどうしたって言うの?」

 美しいイセルの顔が小鬼(ゴブリン)のように歪む。

 おそらく、彼は本気で怒っているのだろう。昔からイセルは、フィネラを本気で優しい聖女だと勘違いしていて、盲信しているのだ。
 平たく言い換えるならば、完全に洗脳されている。

 まぁ、社交界で度々、話題に上がるほど、美しいことで有名だ。そんな美顔も、妹が継母に逆らっただけで歪んでしまうだなんて。本当に滑稽ね。

「絶対にターレンバラ家の名に泥を塗るような真似はするなよ?」

 イセルは「絶対に」の部分を強調しながら、叫んだ。

「分かっているわ。お兄様もそんな怖い顔しない方がいいわよ。せっかくのイケメンフェイスが台無しだもの」

 ふんっ、と鼻で笑うイセルはフィネラの部屋に向かって歩き始める。
 メアリーは兄とは反対側――広間の方に向かった。

「お義母様に朝の挨拶はしないのか?」

「えぇ、先に朝食を済まして今日のやるべきことに取り掛かろうと思っているわ」

 朝の挨拶というのは、フィネラがターレンバラ家に来てから毎日やっていた習慣だ。朝起きて着替えを済ましたフィネラと話すだけなのだが、今思い返せば無駄な時間である。

 復讐をする相手のご機嫌伺いなんて、なんの意味もないわ。


***


「私宛てに届いた晩餐会や舞踏会の招待状は、何通ある?」

「確認して参ります」

 静かに朝食を取りながら、質問をすると侍女は慌てて広間を離れた。

 広間に置かれた長テーブルには三人分の食事が並べられている。

 長テーブルの端――つまり、家で一番権力のある者が座る席が、フィネラ。向かい側がイセルのものだ。

 主食のメニューはパンに、ベーコン、ソーセージ、トマト、マッシュルーム。夕食と比べると貧相な食事だが、朝にはこのぐらいでちょうどいい。

 なにより家族の顔を見る前に、食事を済ませたい今の私にとって品数は少なければ少ないほど良かった。

「十通ほどです」

 侍女が招待状の入った手紙を運んでくる。手紙にはターレンバラ家と関わりのある貴族や、フィネラとイセルが社交界で知り合った人々の名前が書かれていた。

 晩餐会や舞踏会は人脈作りの第一歩だ。

 この場でパーティを管理している女主人に気に入られれば、仲のいい貴族の集まりであるサロンにも呼んで貰える。

 今回、メアリーがパーティに出席する目的は、万が一フィネラへの復讐が失敗した際に、頼りにできる友人を作るためだ。

 今まではお義母様が出席するパーティを選んでいたけど、これからは自分で選ばせてもらいましょう。

 フィネラはいつも気に入らない貴族のパーティにメアリーを、出席させて弱みを握らせたり、情報を集めさせていた。

 別にメアリーもフィネラのために情報を集めることは嫌では無かった。少なくとも魔女に仕立て上げられる前は。

 だから新しい貴族と接近する前には、相手の趣味や嗜好を下調べして、戦略を練っていたのだ。

「あら、ちょうどいい方が居たわね」

 メアリーが興味を持ったのは、ラングスレッタ子爵夫人が書いた招待状であった。

 ラングスレッタ家はフィネラの出身家だ。人脈が作れるだけではなく、彼女についてなにか調べられるかもしれない。

 さて、次はラングスレッタ子爵夫人や、令嬢の趣味について調べておかないとね。


***


 フィネラが私の元を尋ねてきたのは、日が暮れ始めたごろであった。
 夜会用ドレスに着替えて、アクセサリーを選んでいると、いつも通り穏やかな作り笑い》》を浮かべたフィネラが現れる。

「メアリー、ドルゼン卿をご存知?」

「はい、知っていますよ。前の戦いで軍功を上げて英雄扱いされている方ですよね?」

「えぇ、そうよ。本当に素晴らしい方よね。でも彼の立てた無理のある戦略のせいで我が国の兵は多くの損失を……」

 笑顔でドルゼン卿にまつわる噂や、悪事をペラペラ喋るフィネラ。

 表向きはドルゼン卿のせいで、心身に傷を負った人々を心配しているように見えるが、実際は違う。

 フィネラのはただ皆にチヤホヤされるドルゼン卿が気に入らないのだ。

「だからね、メアリー。今回はドルゼン卿がどんな方なのか会って確認して欲しいのよ」

 そして、メアリーをドルゼン卿に接触させて、弱みを握らせようとしている。

「生憎ですが、お義母様。本日はラングスレッタ子爵夫人の晩餐会に参加する予定ですので」

 フィネラの笑顔が、わずかに歪む。
 細めて三日月形に歪んだ彼女の瞳からは『不満』の感情が伝わってきた。

「まぁ、貴方が自らパーティの行先を選ぶだなんて。随分と人付き合いに対して熱心になったのね。もしかして、社交界の花でも目指しているのかしら?」

「いいえ。そんな大きな目標はないわ。私はお義母様の実家と、もっと親交を深めるべきだと思ったの」

 フィネラがゆっくり近づいてくる。
 段々と強くなるバラの香りは、彼女の香水であろう。

「だったら、せめて髪の色は隠さないとね」

「断るわ」

 メアリーが高らかに告げると、フィネラが困ったように眉を八の字にした。

「お義母様は貴方のために言っているのよ。確かに銀髪が不吉の象徴だっていう迷信は、今ではあまり信じられなくなったけど、まだ不気味に思う人はいるわ」

 ねぇ、『良い子』にしてくれるわよね?

 フィネラの問に、メアリーはわざとらしく髪を手で靡かせてから答えた。

「ごめんなさい、お義母様。私、良い子はやめたい年頃なのよ」


***


 パーティに呼ばれた際は、必ず十五分ぐらい遅刻すること。
 早く到着するのは、マナー違反。

 メアリーは馬車の中で、昔読んだ本に書かれていた内容を頭の中で復唱していた。

 窓の外を見ると、土砂降りの雨に覆われた視界の先にラングスレッタ家の入口が見えた。

 さっさと狭い馬車の中から出て、ラングスレッタ家の門を潜りたいが、今は順番待ちの最中だ。

 パーティで席につく順番は、身分が高いゲストから。これも昔本で学んだ。

 トントンと馬車の扉が叩かれ、メアリーが扉を開くと、傘を差したメイドが呟く。

「そろそろ、お嬢様の番ですよ」
「分かったわ。行きましょう」

 メイドに手を引かれて、ラングスレッタ家の屋敷へ。

 さて、フィネラについて何か情報が得られればいいけど。
 晩餐会での席は、パーティを主催しているラングスレッタ子爵夫人が決めている。
 できれば、夫人本人か、子爵の席と近い方がいい。


***


「レディ・メアリー、お久しぶりです」

「えぇ、また会えて嬉しいですわ。ラングスレッタ卿」

「あのぉ……その髪は?」

 先に結論から言おう。

 指定された座席は大当たりだった。

 私が案内された丸テーブルには、ラングスレッタ子爵、娘のグリンダが居たからだ。

 しかし、予想していた通り、二人の視線はメアリーの銀髪に注がれている。

「もしかして髪の色が気になるのですか?」

「えぇ……以前会ったときは茶色だったので」

「あれは、染めていたから茶色だったのですよ。地毛は銀色なの」

 テーブルを囲んでいた貴族たちが、ざわめき始める。

「おぉ、これは美しい。まるで神話に出てくる月の女神ではないですか」

 メガネをかけた真面目そうな紳士が、呟く。おそらく、場の空気を察してフォローを入れたのだろう。

「素敵な褒め言葉をありがとう。お優しいのね。だけど、私に気を使う必要はないわ。人は見た目より中身が大切ですから」

 メアリーが薄笑いを浮かべると、ざわめいていた貴族たちは一斉に黙り込んだ。
 中には青ざめている者もいる。

 怯えるように目を逸らす者の中に、年下に見える背の低い少女がいた。フワフワの金髪が美しい、赤眼の少女。グリンダだ。

 グリンダの服装を見たメアリーは違和感を覚える。

 自身をジロジロと見るメアリーの存在に気づいたグリンダは、苦笑しながら目を逸らした。

「あら、ごめんね。貴方のドレスが素敵だから、どこの仕立て屋がデザインしたのか気になって……」

「これは……ね、ミス・フェルビンに仕立てて頂いたの」

「へぇ……フェルビンといえば、今、最も社交界で注目を浴びているデザイナーよね。注文が殺到していて中々仕立てて頂けないと聞いているわ」

 グリンダが身に付けている白のグローブには、フェルビンの印であるバラが刺繍されていた。
 グローブにはピンクのリボンが手首の部分に結ばれていて、違和感があったのはリボンの部分であった。
 不自然にリボンが緩んでいたのだ。
 そんな……まさか、ね……。

「そう、かな……?」

「髪飾りもフェルビン様がデザインされたものかしら?」

 金髪の上に飾られたブルーの髪飾りに手を伸ばすと、グリンダは怯えるように目を閉じた。身を守るような姿勢だ。

 間違いないわ。
 この子、誰かから日常的に暴力を振るわれている。
 グローブのリボンを緩めているのは、手が腫れているから。髪飾りに、手を伸ばした際の反応は、頭の上に手が伸びると反射的に防御姿勢に入ってしまうからでしょうね。

 彼女の家族構成は、ラングスレッタ子爵、その夫人、長男、次男、グリンダの計五人。
 晩餐会での様子を見る限り父親は候補から外れるわね。
 もし父親が日常的に暴力をふるってるなら、彼女の視線は常に父親へ向くはずだもの。

「ねぇ、グリンダ。貴方にはお兄様がいるわよね?」

「はい、居ますけど……」

「貴方のお兄様や、お母様もミス・フェルビンが仕立てる服は好き?」

「お兄様は大好きです。ですが、お母様はミス・フェルビンのことを、あまり好ましく思っていないようで」

「どうして?」

「民衆の憧れでなければならない貴族が、流行に振り回されるのはバカバカしいっておっしゃるんです」

「たしかに、そういう人も居るわね。貴方のお兄様は心優しくて素敵な方だと聞いたわ。さすが、流行にもビンカンなのね」

 グリンダの動きが一瞬止まる。

「えぇ、お兄様はとても良い方です」

 とても良い方という部分だけ、不自然に強調するグリンダ。
 これは間違いないわね。

「そうだ、グリンダ。良ければ貴方の誕生日パーティに花火はあがるの?」

「はい……上がりますけど?」

「そう、実は私、花火は見たことがなくて、パーティに出席してもいいかしら?」

 テーブルの下。人々に見られぬよう、さりげなくグリンダの手のひらに指で文字を書く。

 『貴方を助けてあげる』と。

 グリンダの表示がパッと明るくなった。

「はい、喜んで」


***


 ラングスレッタ家の大広間。高価そうな絵画や、壺、花飾りで彩られている空間を、オーケストラの音楽が包んでいた。

 使用人の数も、いつもより多く、ラングスレッタ子爵が客人に経済力を見せつけようと、あれこれ努力していたことが伝わってくる。

 オーケストラが絶え間なく響き渡る中、客人の紳士、令嬢は、ビュッフェ式の食事を楽しみながら舞踏会を楽しんでいた。

 六曲目の音楽が流れ始めてから五分が経ち、酒を飲みながら噂話をする人々の視線は段々とある二人組の元に集まり始めた。

 それは、パーティの花であるグリンダと、美しい紳士の二人組であった。

 二人の容姿から、一挙一動に至るまで洗練された動きは見る人々を魅了した。

「あの紳士どなたかしら?」

「見たことが無い方ね」

「後で名前を伺わないと」

「容姿は素敵だし、あとは家督が継げる長男なら完璧よね」

 そわそわとする娘たちの存在に気づいた、紳士は「ん?」と言わんばかりに首を傾げる。
 まるで小悪魔のような対応に、令嬢たちの黄色い悲鳴が上がったことは言うまでもない。

 やがて、ダンスが終わりグリンダと紳士が喫茶室へお菓子を摘みに行く。
 なにやら楽しげに話している二人の姿を見て、令嬢たちは悔しそうに奥歯を噛み締めた。

「ねぇ、見た?」

「あの二人。そのままティールームに入ったわ」

「ということは初対面ではないのよね?」

「くやしぃー、グリンダ嬢より早く、あの方に出会いたかったわ」

 ダンスパーティにおいて初対面の男女はむやみに言葉を交わしてはならない。
 話したり、散歩をして楽しむことができるのは三回踊ってからだ。


***


 時は一時間前に戻る。

 大広間の入口で、来客に挨拶をしているのはグリンダと長男であるアンソニーであった。

「ミス・グリンダ。お誕生日おめでとうございます」

「ありがとうございます。どうぞ、ゆっくりと楽しんで下さい」

 グリンダの前で、優雅に礼をする紳士が一人。茶色の紳士服に、質のいいシルクハットを被った男は、ニッコリ微笑んでからグリンダの前を立ち去る。

 心做しか紳士の姿を見たグリンダの表情も、柔らかくなった。

「知っているヤツか?」

 アンソニーがグリンダに尋ねる。

「いいえ、初めてお会い致しましたわ」

 ニコニコと笑うグリンダの様子をアンソニーは気に入らないと言わんばかりの目つきで見つめていた。

 パーティが始まった後、しばらくして茶色の紳士服をまとった男がグリンダをダンスに誘った。

 二人が踊るさまに人々は魅了され、グリンダの表情もいつもより明るかった。

 ダンスが終わると、二人はティールームへ移る。

 人脈を広げたい貴族たちが、楽しげに言葉を交わす中。グリンダと紳士は、マフィンをつまみながら談笑していた。

「グリンダは社交場が、あまり好きではないようだね」

「どうして、そう思うの?」

「だって僕が、ダンスに誘うまで君は周囲を警戒しているような素振りを見せていたからね。笑顔もぎこちないし」

 グリンダが赤面する。

「嘘、私って、そういうふうに見えていたの?」

「誰にだって苦手なことはあるし仕方ないよ。それより、僕は今のような『ありのままのグリンダ』が好きだよ。無理して取り繕っていない、今の君がね」

「……、貴方って本当に……ね」

 親しげに話す二人。
 物陰から忌々しそうに見つめるアンソニーの姿には気づいていないようであった。

 
***


「また後でね。素敵な殿方」

「ミス・グリンダ。後は君の好きなようにやるんだよ」

「はい、分かっています」

 ティールームから出たグリンダは、紳士と挨拶を交わしてから別れた。
 次のダンスパートナーを探すべく、広間の中央に戻ると、枝のように細い腕を長身の男が掴んだ。

「お兄様……なにを……」

「いいから付いてこい」

 アンソニーは小さな妹の腕を引っ張りながら無理やり広間の端っこに連れていこうとする。

 すると、二人の様子を不審に思ったのか、先ほどまでグリンダと踊っていた紳士が、アンソニーを見据える。


「ちっ、めんどくせぇ」


 アンソニーは舌打ちをしてから庭の方へ向かった。

 庭師によって綺麗に手入れがされた花畑の中は、静寂に包まれている。
 月明かりに照らされたグリンダとアンソ二ーをフクロウが見つめていた。

「俺の許可なく、勝手に見知らぬ男とイチャついてんじゃねえよ」

 グリンダは何も言い返さない。
 彼女の目尻からは今にも涙が流れそうであった。

「おい、なんだよ。いつもみたいに『ごめんなさい』って謝れよ。アァ?」

「嫌……です」

「なんだと?」

 グリンダは涙を拭ってから、振り絞るような声で叫んだ。
 小さくて宝石みたいなグリンダの瞳に宿るのは、弱いながらも揺るがない意思である。

「絶対に嫌です!」

「何考えてやがる。いいか、お前はトロくて、すぐに騙されるアホで、俺がいないと何もできないんだ」

「そんなこと……ありません。お兄様は恐怖で私を縛り付けるのが好きなだけです。私のことなんて何も考えていない」

「クッソ、好き勝手言いやがって。まだ躾が足りないみたいだな!」

 大きく手を上げたアンソニー。
 彼の手は、怯えながら目を閉じたグリンダの頬に命中するかと思われたが――。

「これ以上はやめなさい。どうか落ち着いて」

 パシッという乾いた音が鳴り響いた。

 グリンダは少しずつ目を明け、目の前で起きている状況を察して空いた口が塞がらなくなった。

 先ほどまで、グリンダと踊っていた紳士がアンソニーの片手を受け止めたのだ。

「なんだ、お前。邪魔するんじゃねぇよ」

「あら、落ち着いてと言ったのよ。もしかして耳が聞こえなくて?」

 紳士の声が段々高くなり、女性の声に変わっていく。

「まさか、そんな……」

 段々と顔を青ざめるアンソニー。

 紳士は金髪の髪を片手で掴んで、花畑の中へ放り込んだ。

 別に紳士が金髪を無理やりむしり取ったわけではない。彼の髪はいわゆる|偽物ウィッグ》であったのだ。

 金髪の下から現れたのは銀髪の毛。
 月光に照らされて、ダイヤモンドのように輝いている。

「初めまして。メアリー・ターレンバラと申します。以後お見知りおきを」

「この俺を騙して……なんのつもりだ?」

 怒りに震えるアンソニーを、メアリーは呆れたような表情で見つめていた。

「私は昔からオペラ鑑賞が趣味なの。だから観衆のためにも演出にはこだわらないといけないと思って」

「観衆? まるで他のヤツでも見ているような良い方だな」

「えぇ、お客様なら、あちらに」

 メアリーは、そう言いながら庭と広間を繋いでいる扉の方に視線を移した。

「嘘だ……そんな……」

 扉の前で集まっていたのは、ラングスレッタ子爵を含めた、本日、誕生日パーティに出席している紳士と淑女全員であった。

 全員の視線がアンソニーに注がれている。

 ラングスレッタ家の跡継ぎによる横暴な振る舞いを目撃した客人たちは、口々に侮蔑の言葉をアンソニーにぶつけた。

「おい、どうやって全員を集めた?」

「あら、私は何もしていないわ。皆様が勝手に集まったのよ」

「どういう意味だ?」

「もうすぐ分かるわ。空を見上げてご覧なさい」

 言われるがままに空を見上げるアンソニー。
 彼――いや、ラングスレッタ家の敷地にいる全員の視線が空に注がれた瞬間、真っ黒な空に鮮やかな炎の花が咲き乱れた。

「パーティで花火が打ち上がるだなんて、聞いてないぞ」

「そうでしょうね。子爵やグリンダに協力してもらって貴方にだけ花火が打ち上がることを教えないでもらったの」

 アンソニーの頬が引きつり、プルプルと震える。

「そんな……嘘だ。まるで初めから全て仕組んでいたみたいじゃないか」

「あら、やっと気づいたの? そうよ、貴方は初めから私の手のひらの上で踊らされていたの」

「卑怯だぞ!」

「まぁ、それは失礼。でも、これが悪女(わたし)流儀(ポリシー)なのよ」

 薄笑いを浮かべながら、首を傾げるメアリーに対し、アンソニーはこれ以上何も言わないつもりであるようだった。
 三人の元にラングスレッタ子爵が近寄ってくる。

「アンソニー。お前はなんて事をしてくれたんだ!」

 後は子爵に任せても大丈夫そうね。


 メアリーはグリンダの手を取りながら庭園から離れる、


――残念ね、アンソニー。貴方は道を誤ったのよ。


***


 昼下がりのターレンバラ家。
 屋敷の中ではメイドたちが、室内の掃除をしている中、主人であるメアリーは庭で友人と過ごしていた。

 白色のガーデンテーブルを囲むのは、メアリーとグリンダである。

 小さなテーブルの真ん中には、サンドイッチや、スコーン、ケーキが乗ったアフタヌーンティーセットが置かれていたが、残念ながらメアリーとグリンダの口に運ばれることは無かった。

 なぜならば二人ともポーカーに熱中しているせいで、アフタヌーンティーの存在を完全に忘れていたからである。

「また負けた。メアリー、貴方イカサマなんてしていませんよね?」

「イカサマなんてしてないわよ。ポーカーは確率を計算して、常にベストを尽くせば勝てるゲームだもの」

「それ、本気で言ってます?」

 ゲームが終わり、得意げな表情でカードを片付けるメアリーを、グリンダは呆れた様な目で見つめていた。

「私はやっぱりメアリーが羨ましいです。細いウエスト。化粧が要らない美顔だけではなく、明晰な頭脳まで持ち合わせているなんて」

「貴方が思っているほど私はすごくないわ。それにしても友人とカードゲームだなんて久しぶりだわ。今日は私の屋敷まで来てくれてありがとう。グリンダ」

「メアリーは普段、友人とは過ごさないのですか?」

「サロンには時々、参加していたけれど、友人と過ごすことより人脈作りが優先だったから。こうやって友人と世間話をしながら茶を飲む時間なんて無かったのよ」

 そう、今まではフィネラのためにサロンで情報を集めたり、逆に排除対象の悪い噂を流したりしていた。

 友人を選ぶ自由すら、私には無かったのだ。

「そうだ、メアリー。今度、また男装をして舞踏会に参加して下さい。最近、しつこく贈り物をしてくる殿方がいて、無視しているの。だけど、裏では『彼女は俺に惚れているのに照れ無視している』とか言っているみたい」

 飛んだ勘違い男ね。

「残念だけど私は変装の達人ではないから、いつかバレるわ。それと、『ターレンバラの令嬢は男装が趣味』だとか噂されたら困るからね」

「そっか……」

 分かりやすく落ち込むグリンダ。

 なんだか可哀想になってきたので、また別に勘違い男を撃退する方法を考えておくことにする。

 ふふっ、友人と過ごすというのも悪くないわね。頼られるのも悪くない。

 なにより、グリンダと関係を築いたことにより、情報を得る手段が増えた。

「そうだ、メアリーに頼まれてていた通り、フィネラ叔母様についてお父様に聞いておいたわ」

 グリンダは紅茶のカップに口をつけようとした途端、はっと何かに気づいたように目を見開いた。

「あら、ありがとう。なにか分かった?」

「それがね……ほとんど情報が得られなかったの」

 申し訳なさそうに肩をすくめるグリンダを、メアリーは安心させるように笑顔を見せた。

「大丈夫よ。分かったことだけでも教えてちょうだい」

「うん。まずね……お父様にフィネラ叔母様についてお聞きしたら『なにも知らない』と答えたのよ。お母様に至っては『貴方は何も知らなくていいの』なんて言い出して……」

 ラングスレッタ家はフィネラについてなにか隠したいことがあるのね。

「それで使用人にも聞いてみたんだけど、執事いわくフィネラ叔母様とお父様は血が繋がっていないそうですよ」

「つまり私のお義母様――フィネラはラングスレッタ家の養子?」

「その通りです。どこの家から引き取られたのかは執事を含め、誰も知りませんでした」

「なるほど。つまり、お義母様の出生は完全に不明か……」

 やっと有効な手がかりが掴めたと思ったのに。振り出しに戻された気分である。

「次は、そうね……」

 グリンダに次の指示を出そうとした瞬間――メアリーは、庭園の中に人が入ってきたことに気づく。

「この話はまた後にしましょう。どうやら《《本人》》が来たみたいだから」

 庭園の奥深く。メアリーとグリンダが過ごしているスペースに向かって歩く人影。
 一切の日焼けがない白い肌に、ビスクドールのように整った顔。長い金髪と虹色の瞳は、太陽よりも眩しく輝いている。
 フィネラだ。

 いつも通り優雅に歩くフィネラであったが、彼女の後ろに居る使用人の数が前日よりも減っていた。

――なにか、あったのかしら?

 嫌な予感がする。

「こんにちは。ミス・グリンダ」

「はい、こんにちは。フィネラ叔母様」

「いつも私の娘と仲良くしてくれてありがとう」

 にこやかに笑う彼女の姿は聖人そのものであった。

「メアリーも素敵なお友達ができて良かったわね。貴方の”母として”嬉しいわ」

 不自然に“母として”という部分を強調するフィネラ。

 メアリーは笑顔を崩ないまま口を開いたが、彼女の瞳には炎のような怒りが宿っていた。

「それで”母”ではなく“伯爵夫人”としてはどうなのかしら?」

「とても悲しいわ。だって今まで伯爵令嬢として相応しい振る舞いをしていた娘が、突然、髪を染めることをやめて、お義母様の許可なくパーティに出かけるようになってしまったもの」

 フィネラの視線が、メアリーからグリンダに移る。

「ねぇ、ミス・グリンダ。貴方からもなにか言って貰えないかしら?」

 グリンダはしばらく考えるような動作を見せてから、口を開いた。

「私はメアリーが伯爵令嬢として相応しくない振る舞いをしているとは思えません」

 今まで絵画のように完璧な、笑みを浮かべていたフィネラの表情が引きつる。

「我々貴族は民衆の憧れである。すなわち、民衆の考え方に囚われず堂々とするべきだ……これは、私のお母様がいつもおっしゃっている言葉です。私には『銀髪は不吉の象徴』という迷信に惑わされず堂々と振舞っているメアリー様の姿は、最も貴族令嬢らしいと思います」

「グリンダ、貴方……」

 喜びの余り、言葉が漏れるメアリー。

「へぇー、あの人らしい考え方ね。いいわ、貴方がメアリーのことを大切に思っていることは、よく分かったから」

 フィネラの方の表情には、一瞬影が差したが、すぐに笑顔が戻る。

「ねぇ、お義母様。ところで使用人の人数が減っているようだけど?」

 ずっと気になっていたことを問いかける。

「よく気づいたわね。使用人なら何人か解雇したわ」

「え、どうして?」

 ターレンバラ家は、貴族の中で比べると決して裕福な方ではないが、だからといって使用人を減らす必要があるほど没落しているわけでもない。

 一体どうして使用人を解雇したの?

「実は昨日、掃除係(チェインバーメイド)が私の前を通ったのよ。本当に礼儀知らずな子だったから解雇したわけ」

 なるほど。一見すれば、正当な主張だ。

 一般的に掃除係のような下級の使用人が雇い主の前に姿を見せることは失礼とされている。

 だから、大体の屋敷は主人のスペースと、使用人の生活スペースが別々になっていて、使用人は主人が外出中に掃除を済ませる。

 メアリーとしては下級の使用人が、姿を見せようが、前を通ろうがどうでもいいが、フィネラにとっては違うらしい。

「あら、クビになったのはお義母様の前を通った使用人だけ? 私の目には何人もの使用人が減ったように見えるわ」

「あー、それはね。侍女の何人かがクビになった子と仲が良かったみたいで『あの子だけは見逃して下さい』ってお願いしてきたの。口うるさいから、あの子たちもクビにしちゃったわ」

 冷水を浴びたような悪寒に襲われる。

 間違いない。

 おそらく、最初にクビになった使用人はフィネラにとって邪魔な存在となり“排除"されたのだ。

 フィネラは昔から邪魔だと感じる存在を、それらしい理由で“排除"する癖があった。

 きっとフィネラは最初の子を庇った使用人が、裏で自身の陰口を言うことを恐れたのね。

 使用人の主人に対する忠誠心が揺らいでしまうもの。

 裁判にかけられ、牢屋で処刑の日を待っていた記憶を思い出す。

 居なくなった使用人は無事であろうか?

 まさか、投獄されていないわよね?

「そうでしたか。ちなみに、クビにした使用人は別の屋敷に移ったのかしら?」

「そうねぇー」

 フィネラは意地らしく笑ってから、メアリーの耳元に近づき、ささやく。

「教えてあげないわ。メアリーが良い子に戻ったら考えてあげてもいいけど」

「貴方にとって“良い子”ってなに?」

「私の邪魔にならない人間のことよ」

 継母を睨むメアリー。
 フィネラは小さく手を振りながら庭園を立ち去る。

「じゃあ二人とも。仲良くね」









 




 

< 1 / 1 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

幼なじみの爽やか王子様が執着の獣になりました

総文字数/10,370

恋愛(キケン・ダーク)5ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop