恋するバッテリー

久しぶりの朝

「…よしっ!」
私は佐藤凛音(さとうりお)。小5の11歳。
髪、結構伸びたなあ伸びた髪を一つに結ぶ。
前の学校でみんなからもらったお気に入りのヘアピンをつける。みんなって言っても五人くらいだけど、それでもとっても気に入ってるんだ。
「行ってきます!」
「行ってらっしゃ~い」お母さんの声がする。私のお母さんはすごくやさしくて、滅多に怒らない。今までで怒られたのは二回だけ。
一回目は野球を始めたばかりの頃。練習がきつくて「もうやめたい。」と愚痴を言ったとき。「自分で決めたことは最後までやり抜け」と怒られた。初めて怒られてすごく驚いた。その後は何もなかったように接してくれた。二回目は…ってそろそろ遅刻しちゃう!
今日は久しぶりの学校。前の学校…というか野球チームで怪我をしてしまった私は、一ヶ月間入院。そこから冬休みは家にこもりっぱなしで。運が良いことにお父さんの仕事の都合で今日から他の学校に転校することになった。運がいいことにっていうのは、前のチームメイト達に顔を合わさずにすんだから。もうあんな奴らなんか知らない。もう野球なんか知らない。まぁ怪我した私も悪いんだけどね。
学校は新しい家から10分くらいで着くらしい。初めて見る景色達に、心が躍る。新しい学校でも友だち出来るかな♩
今着てるパーカーは、もう買って二年くらいになる。白いシンプルなデザインと、だぼっとした感じが結構気に入ってる。
それから。中の服は黒のTシャツ、特にこだわりとかはないけど、文字が描いてるのとか、シンプルなのが好き。
そんなことを考えてたら学校に着く。「わぁ~でっかい学校。」思わず声が漏れてしまう。前は千葉県に住んでて、
東京は隣の県だけど、やっぱりいざ来てみると都会って感じがする。ソワソワしてると、優しそうな女の人に声をかけられた。
「あなたが佐藤さんね!5年3組担任の、月野紗結(つきのさゆ)です。よろしくね。」この人が私の担任かぁ。優しそうな人で良かった!
「はいっ!月野先生!よろしくお願いします!」「ふふっ。元気ねぇ」朝は強い方じゃ無いけど今日は楽しみで早く起きてしまった。
「私が呼んだら教室に入ってきてくれる?」そういう感じなんだ。うちは別に転勤族じゃないから転校は初めて、全然システムは分かってない。「はい!分かりました」…大丈夫。お母さんが一緒に転校の挨拶を考えてくれた。失敗はしたくないから一応ね。
でも、前の学校でも友達は多かった。喋るのは得意な方だし、きっと大丈夫。「今日はこのクラスに転校生が来ます。」ふー。そろそろだ。「まじ!?」「可愛いんかなー」「仲良くなれるかな…」………やばい。なんか期待されてない!?別に可愛くないし。
「はい。静かに~。」「それじゃあ入ってきて~」よし。行こう。「し、失礼します。」
「おおー!」何その微妙な反応。気まずいんだけど。まあ気にせず続けよう。「千葉県の学校から来ました。佐藤凛音です!よろしくお願いします!」「よろしく!」とか聞こえてくる。良かったのかな。「あそこの席に座ってくれる?」先生が指を指したのは、一番後ろの端っこの席だ。超あたり席じゃん!「はーい!」
あーこの感じ久しぶり~!隣の席は…って寝てる!?にしてもかわいい寝顔だな…なんだか子供みたいな?隣の席は少し小柄な男の子ですーすー寝てる。まあ起こすのも悪いしそっとしておこう…そんな時に前の席の子女の子が声をかけてきた。「私は木下優芽(きのしたゆめ)!よろしくね!」友達ができそうでよかった~!「うん!」「凛音って呼んでいい?」わぁ、うれしいな。「よろしくね!優芽!」「にしても、佐藤凛音ってどっかで聞いたことあるんだよなぁ~」何でだろう?私は木下優芽は初めて聞いた名前だし、初対面なはずなのに。
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