「妃に相応しくない」と言われた私が、第2皇子に溺愛されています
クラウディオ殿下がそう言った時、私は思わず立ち止まってしまった。

その声音は、どこか静かで──けれど痛みが滲んでいた。

「何を仰せか。皇太子は兄上が継がれているではないですか。」

カイルの声は、思わず固くなっていた。

兄を敬愛してきたからこそ、その言葉を受け入れがたかった。

けれど──

クラウディオ殿下は、ふっと微笑んだ。

それはどこか、悟った者だけが見せる、静かな諦めの笑みだった。

「俺は──たぶんもうじき、皇太子の座を下ろされるだろう。」

「兄上……」

カイルの呼びかけに、クラウディオは黙って歩み寄る。

そして、弟の肩にそっと手を置いた。

その手に込められた力が、言葉以上にすべてを語っていた。

「その時──次の皇太子になるのは、おまえだ。カイル。」

「……っ」

カイルは、しばらくの間何も言えず、ただ兄を見つめた。

その眼差しには、尊敬と哀しみ、そして戸惑いが入り混じっていた。
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