「妃に相応しくない」と言われた私が、第2皇子に溺愛されています
「本当は、カイル殿下と婚約なんてしたくなかったんだろ?俺への当てつけなんだろ?だったら……よりを戻そう。な?」

……なにを言っているんだろう、この人は。

私は、ゆっくりと手を振り払った。

「お帰りください、ユリウス様。」

「……っ!」

「私を、誰だと思っているんですか?」

そう言って、私は背筋を伸ばしたまま彼を見下ろすように告げた。

「恐れ多くも、私は──将来、王妃になるかもしれない身ですのよ?」

ユリウスの顔が、真っ赤に染まり、唇をキュッと噛みしめる。

そのまま、何も言えずに踵を返すと、荒々しく扉を開けて去っていった。

──その背中は、もう二度と戻ってこない。

でも、それでいい。

だって、私はもう“地味な令嬢”なんかじゃないのだから。
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