「妃に相応しくない」と言われた私が、第2皇子に溺愛されています
「いや、婚約した時から、こうなると思ってたよ……」

その肩が、ほんのわずかに震えている。

「セレナも、もう大人なんだもんな……」

まるで、自分に言い聞かせるような声。寂しげな背中が、妙に小さく見えた。

「俺もそうだった。そうだよな……」

懐かしむような、遠くを見るような目をして、お父様はよろよろとした足取りで廊下の奥へと歩いて行った。

その後ろ姿に、私は思わず胸がきゅっと締めつけられる。

父にとって、私はいつまでも娘で――

でももう、誰かの妻になるのだ。

「……ありがとう、お父様。」

小さく呟いたその声は、お父様には届かなかったかもしれない。

でも私は、確かにその背中に向かって、感謝を伝えた。
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