「妃に相応しくない」と言われた私が、第2皇子に溺愛されています
言い終わる頃には、目の奥が熱くなり、視界が滲んでいた。

気づけば、一粒の涙が、頬を伝って落ちていた。

「……セレナ。」

カイルは立ち止まり、私の肩を包み込むように抱き寄せた。

そして、濡れた頬に指先で触れ、やさしく涙を拭う。

「馬鹿だな、君は。」

囁きは、まるで愛おしむようだった。

「君が必要なのは、今も、これからも、ずっとだよ。」

その声が、胸に深く染みていく。

「ユリウスへの復讐なんて、ただのきっかけだ。君と婚約できたのが、あの時だったから、それに乗っただけ。……でも、君に触れて、君の心に触れて、もうとっくに俺は、後戻りできなくなってる。」

私の目を覗き込むように、カイルは言った。

「君がいない未来なんて、俺は考えられない。」

まっすぐな瞳に、私の不安は少しずつ溶けていった。

ああ――この人は、ちゃんと、私を見てくれている。

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