「妃に相応しくない」と言われた私が、第2皇子に溺愛されています
静かな風の中、私の鼓動が、カイルにだけ届いてしまいそうで、胸が熱くなる。

この人は――やっぱり、本気で私を見てくれている。

私達は、馬車を離れて、宮殿の庭をゆっくりと歩いた。

日が落ちかけていて、空は茜色に染まり、花壇に植えられた花々が柔らかな風に揺れていた。

「セレナ。」

あんな話をしたばかりなのに、カイルは何も言わず、私の手をそっと握ってくれる。

その温もりが、かえって胸を締めつけた。

「不満があるわけじゃないんです。」

そう伝えると、カイルは目をパチクリと瞬かせた。

「でも……不安なんです。」

私の声が、かすかに震えた。

「不安……?」

繰り返すようにカイルが囁く。その目は、優しくもどこか切なげだった。

「本当は……ユリウスへの復讐のために、私を選んだだけで。それが終わった今、カイルにとって私は……もう必要じゃないんじゃないかって……」
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