「妃に相応しくない」と言われた私が、第2皇子に溺愛されています
「セレナ……ありがとう。」

その低く優しい声が、私の名前をそっと包み込む。

ふと風が吹いて、庭に咲く白い花々が、一斉に揺れた。

あの頃、子供の私達が摘んでいた白い花。

それがまるで、祝福するように揺れていた。

「君を……心から愛している。」

カイルの真っ直ぐな告白に、胸がじんわりと熱くなって、気づけば頬に涙がつたっていた。

「また泣く。」

優しく微笑んだカイルが、そっと私の涙を指先で拭ってくれる。

「だって……嬉しいんです……」

声が震えてしまう私を見つめながら、彼は小さく囁いた。

「泣き虫の君も、全部好きだよ。」

私は泣きながら、笑った。

その時だった。

「殿下、お時間です。」

使用人の遠慮がちな声が、無情にも私たちの幸せな時間を区切る。

「また会いに来る。」

カイルがそう言った瞬間、私も慌てて言葉を重ねた。

「いえ、私が宮殿に……」

「いや、俺が屋敷に……」

目が合って、ふたりとも吹き出した。
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