「妃に相応しくない」と言われた私が、第2皇子に溺愛されています
「こうやって君を抱き寄せたい。そのために“復讐”とか、“見返してやろう”とか……あたかも君を守るための理由にすり替えた。」

一拍の沈黙。
次に落ちてきたのは、優しいキスだった。まるで、私の不安を閉じ込めるように。

「でもね、セレナ。」

カイルの額が私の額に触れた。

「俺は、ただ君が欲しかったんだ。理屈じゃない。立場でも、家柄でも、過去の関係でもない。」

私の心臓が早鐘を打つ。

「今までこんなにも、一人の女性を欲したことなんて、なかった。」

熱を帯びた言葉が、私の胸を締め付けた。

それは、どんな優しい言葉よりも深く、確かに私の心を満たしてくれる告白だった。

「私も……」

震える声で、私はそっとカイルの胸元に顔を埋めた。彼の胸はあたたかく、そして規則正しく脈打っていて、安心感に満たされる。

「こんなに……誰かの側にいたいと思った人なんて、初めてなの。」

言葉にした瞬間、胸の奥にずっと詰まっていた想いが、少しだけ解けた気がした。

カイルの腕が、ぎゅっと私を抱きしめてくれる。まるで、大切な宝物を包むように。
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