「妃に相応しくない」と言われた私が、第2皇子に溺愛されています
「……カイル」

その横顔に、私は深く胸を打たれた。

カイルの目には、王族としての責任と、国を守る決意が宿っていた。

しばらくして、王宮にある噂が届いた。

「東の穢土に、一人の令嬢が立ち向かっていると──」

「令嬢?」カイルは眉をひそめた。「聖職者や神官ではなく?」

「ええ。それも……伯爵令嬢ですって」

「伯爵家?」

公爵や侯爵に比べれば地位は中程度。

しかし、貴族の血筋から聖女の才を持つ者が現れたのは、前代未聞だった。

「その名は──ティアナ・エルフェリア。」

彼女は神聖な光を用いて穢土を浄化し、多くの人を癒しているという。

実際に、浄化が進んだ村では“奇跡”とさえ囁かれていた。

「もし、神託が下れば……」カイルは静かに言う。

「その令嬢が、正式に“聖女”として選定されることになるな。」

案の定、宮廷神殿より神託が下りた。
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