野いちご源氏物語 三四 若菜(わかな)上
上皇(じょうこう)様は六条(ろくじょう)(いん)行幸(みゆき)なさったあと、ご体調を(くず)された。
もともとご病気がちではあったけれど、いよいよ今回は死期(しき)が近づいているとお感じになる。
ずっと出家(しゅっけ)したいと思われていたものの、母君(ははぎみ)皇太后(こうたいごう)様がご存命(ぞんめい)のうちは遠慮なさっていた。
出家すれば親子の(えん)も切ることになるから、母君がどれほど悲しまれるかとご同情なさったのね。
でも、その母君もお亡くなりになって、
「もう私の命も長くないだろうから、やはり出家をしたい」
と、ご準備をお始めになった。
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