√スターダストtoらぶ
エピローグ
幼き日の思い出。

外で少し走り回っただけなのに、額から汗が滝のように流れてしまうくらい暑かったあの夏の日。

夜出かけていく母を見送る時間ギリギリまでわたしは一人で公園で遊んでいた。

公園にはいつも同じ学校に通う他学年のグループがいて、サッカーをしたり、砂場で遊んだり、遊具で遊んだり、それぞれ楽しんでいた。

そんな中でわたしはひとりぼっちの男の子を見つけた。

その子は木の陰で足元の蟻の行列をじっと眺めていた。

不思議な子だなぁ。

何してるんだろ?

気になって近づいていって、

頭に浮かんだことをそのまま口にしていた。


『何してるの?』


その子はわたしに構わず、蟻の観察を続ける。

わたしは少しでも興味を引きたくて、ポケットをあさった。

あったあった!

この前駄菓子屋のおばちゃんがくれたいちご飴!

ほんとは食べたかったけど、いいや。

あげよう。

…仲良くなれるかもしれないし。


『はい、これあげる』


わたしは飴を男の子の前に差し出した。

喜んで受け取ってくれる。

そう思ったのに。


『えっ?どこ行くの?』


男の子は走り出した。


『ちょっと待ってよー!』


わたしは追いかけた。

謎の男の子はわたしより全然足が速くて振り切られそうだった。

でも、謎の男の子はすっ転んだ。

砂場を囲う煉瓦に気づかず、そのままドボンしたのだ。


『え?!大丈夫?ケガしてない?』


わたしは謎の男の子の顔を覗き込んだ。

頬には擦り傷が。

でも、良かった…。

大丈夫そう。


『はい』


わたしは右手を差し出した。

謎の男の子はサッとわたしの顔を盗み見た。

なんかちょっと怯えてる?

…大丈夫、だよ。

わたし、優しいよ。

だから、そんな顔、しないで。

笑って。

そう願いながら、わたしは笑いかけた。

すると謎の男の子が手を取った。

わたしは勢いよくその手を引いた。


『よいしょっと』


砂場から助け出された男の子がわたしを見つめる。

え?

何?

わたしに何かついてる?

鏡、鏡〜と探していると、公園の時計が目に留まった。

真夏の日差しに目を細めながらわたしはそれを見つめた。

…あ!


『うわ、もう17時?!帰らないと!』
  

わたしは走り出した。

17時はまずい!

お母さん、行っちゃう…!

どんどん加速して公園の出口が見えてきた時、

謎の男の子に何も言っていなかったのを思い出して、


『あのさ!』


わたしは振り返った。

ぜえぜえ言いながら追いかけてきた謎の男の子にわたしは叫んだ。


『また…また明日、ね!』


両手をぶんぶん振りながらわたしは後ろ向きに走った。

両親が離婚して急遽引っ越すことになって

“また明日”は来なかった。

…そう、思ってた。

これで物語は終わったのだと思い込んでた。

そんな時に、

あなたに出逢った。

あなたもわたしを捜していた。

お互いに忘れられずにいた存在は

今ではかけがえのない存在になった。

そういうロマンチックでドラマチックなわたしとあなたの物語はこれからも続いていく。
< 82 / 84 >

この作品をシェア

pagetop