キラくんの愛は、とどまることを知らない

020 エピローグ


「───それでは最後に、新婦、ひよ子さんから皆様への感謝のお言葉を綴ったお手紙を披露して頂きます」
 
 
 ───ヒカリの結婚式から一年……天候にも恵まれた秋晴れの今日、私とキラくんは結婚式を迎えていた。
 
 沢山の人達に見守られ、祝福された挙式、披露宴の終盤、私が手紙を読む時がきた───…… 
 
 
「本日お集まりくださった皆様───」
 
 口下手な私は、自分の気持ちを手紙にして伝える事にしていた。
 
「今日まで誰にも言わずにきましたが───実は今、私のお腹の中にはキラくんとの赤ちゃんがいます。よくバレなかったな、と思いますが実はもう安定期に入っています───えへへ……」

 私はつわりも全くと言うほどになく、5ヶ月を過ぎた今もお腹は少しぽっこりしたかな、くらいだ。
 選んでいたウエディングドレスはもともとが身体のラインを拾わないデザインだったこともあり、まわりに迷惑をかけることもなかった。

 私のサプライズ発表に、会場は唖然としていた。

 隣に立つキラくんは、驚きすぎてフリーズしている。
 それもそのはず……私は来てもいない生理日を虚偽報告し、病院はこっそり有給をとり一人で行っていた。
 夜の行為は、あの部分が痒い、と言ってしばらく逃げながらも、きちんとスキンシップは取りつつ、誤魔化していた。

「安定期とはいえ、この子()が無事に産まれくるかはまだわかりません。今この場で発表する事は褒められる事ではないかもしれませんが、今日お集まりくださった方々は、私達夫婦(・・)にとって、本当に大切な方々であり、喜びも悲しみも共有したいと思う家族(・・)であると、私は思っております」

 実はお腹の子は双子なのだ。ひとまずそれは秘密にしておく。

「夫婦として、また、これから親になる者として、大変未熟な私たちです。残念ながら私には、見本となり頼りになる実の両親がおりません……ですがこの子には、この子のパパを育てられた黒霞家のご両親がついています。私はこれから、妊娠、出産、子育てについて沢山学ばせてもらおうと思っています。この場にいらっしゃる皆様からも、是非とも温かい助言をいただけると嬉しいです───……以上です、ありがとうございました」

 しーんと静まり返る会場……
 司会をしてくれていたキラくんのお友達のアナウンサーの方も、どうしようかと悩んでいる。

「ひよ子っ!」

 突然、キラくんが私を抱き締めた。
 そして、右腕を高々と掲げ、ガッツポーズをキメている。

 キラくんのガッツポーズに、会場からは、わぁっと、拍手喝采、指笛が鳴り響く。
 おめでとう! ダブルでめでたいな! キラが父親か! と、沢山の祝福の声が聞こえてきた。
 
 お義母さんや健二さん、美智子おばさん、ヒカリや主任までもが大号泣している姿が視界に入る。




 ……しかし披露宴終了後、近しい関係者全員から大叱咤を受けた事は言うまでもない。

 キラくんは心配だから、と言って聞かず、予定していたハネムーンの予定を全てキャンセルだ、と相馬さんに指示をだした。
 しかし、キャンセル料を払うなら、と代わりに相馬さんが行くと言い出したのだ。実は、私達のハネムーンの期間、相馬さんも長期休暇をとっていたという。

「相馬、ハネムーン用の宿に誰と泊まるつもりだよ」

「……私にだって一緒に行く相手くらいいます」

 その場は再び、驚愕に包まれた。

 私も気になったが、相馬さんは少し謎に包まれた感じが魅力なので、あえて知らなくてもいいか、とお腹をさする。



 挙式後すぐに、私達は入籍し、母子手帳も書き直してもらった。

「黒霞 ひよ子───って、なんか、強そうだね」

「そだな、世界一強そうだ」

「でも、吉良の人間はもう、誰もいなくなっちゃったんだね……」

 そんな事をしんみり呟くと……

「……くっ、やはり俺が吉良 稀羅になるべきだったか……」

 と変な声が聞こえてきた。

「ふふっ、大丈夫だよ。吉良家の皆はお墓の中にいるから」

「……ひよ子……好きだ!」

 キラくんは私をギュっとした。いつものごとく、なぜかはわからないが。

「……ふふ、私も大好き……───そうだ、まだ皆には秘密なんだけど、キラくんはパパだから教えるね。赤ちゃん、双子なの」

「───っ?! ……一気に二児のパパ……か……早めに強そうな名前考えないとな……」

 別に強そうでなくてもいいのだけど……









「元気な赤ちゃん産んで、また復帰しろよな」

「はいっ育休あけたら主任がいないとか、やめてくださいね」

 双子ということもあり、産休に入るのは普通より早い私。主任には迷惑をかけるが、温かく見送ってくれた。

「おい、主任……うちの辺見を派手にフッてくれたそうじゃないか」

 キラくんが言った。

「ああ、辺見さんは俺にはもったいない人だから……それに俺、気ままな一人身で、吉良のお兄ちゃんポジション狙う事にしたんだ」

「え? 主任が私のお兄ちゃん、ですか?」

 いいかもしれません……

「ま、ほら俺ってば“みんなの主任”でいなきゃだしな!」

 そう言って主任は、私の頭をワシャワシャして去っていった。
 
「ったく! 何がお兄ちゃんだ、絶対に俺の子は抱かせてやらないからな!」
 
 なぜか敵対心むき出しの私の夫。
 
 

 父が亡くなってから、色々あった。

 再会したキラくんが私に見せてくれた世界はまるで違った。
 色鮮やかで温かく、沢山の笑顔に溢れている。

 私の奨学金は、入籍してすぐにキラくんが夫権限だ、と言って全額返済してくれた。
 父の借金は一応給料から毎月コツコツ積み立てている。無駄だとはわかってはいるが、いつかはキラくんに返すつもりだ。

 キラくんは億万長者だけど、私は違う。
 キラくんは、違う私に合わせてくれる。

 でも私はキラくんに追いつけるように頑張る。
 億万長者のお嫁さんにふさわしい女性として、母親として……キラくんと産まれてくる子供達のためなら頑張れる。

 この人の手をとれば、なんだってできそうな気がする。







 
「帰ろう、キラくん───私達の家に」
 
「ああ、帰ろう」



 

 fin‥
 
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