私の隣にいるのが俺じゃない理由を言え、と彼は言う
お昼が終わって、一息ついていたら、おばあちゃんが言った。

「風花さん、スイカが畑にあるから、取ってくれるかい?」

「暑いから、やわやわでいいからね〜」と、お母さんが笑いながら言い添える。

「行こうか」と遥人が言って、私は頷いた。

外に出ると、真夏の光が容赦なく照りつけていたけど、不思議といやじゃなかった。
麦わら帽子を借りて、畑へ向かう。

土の匂い、蝉の声、遠くで鳴る犬の鳴き声。

スイカを見つけて、「これ、大きい!」と笑うと、遥人も「それ、たぶん当たりだな」と笑った。

スイカを取ったあとも、ついでに少しだけ草取りをしたり、トマトをつまんだり、枝豆の葉っぱに手を伸ばしたり。
暑さも忘れて、夢中になっていた。

「汗かいてるでしょ。お風呂、わかしたから入ってらっしゃい」
帰ってくると、お母さんがそう言ってくれて、私は甘えることにした。

古民家らしい、少し広めのお風呂。窓を開けると、涼しい風が入ってくる。

身体をさっぱりさせて、髪を乾かしていると、お母さんが冷たい麦茶を出してくれた。

「いただきます…」
ごくごくと飲む麦茶の冷たさが、喉に心地よくしみわたる。

そのまま、ふわっとしたまま、居間へ行ったら――

畳の感触が気持ちよくて、ふと、横になった。

さっきまで騒がしかった蝉の声が、少し遠くなった気がして――

そのまま、私は、うとうとと、眠ってしまった。
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