私の隣にいるのが俺じゃない理由を言え、と彼は言う
指定した時間、ぴったり。
停まった車の中には、いつも通りの野田がいた。

「おはよう。ありがと」
そう言って助手席に乗り込むと、すぐに気づいた。

「…なにこれ?どっさりお土産?」

後部座席には紙袋がいくつも積まれている。
「うちの親が、“これ持ってけ”ってうるさくてさ。漬物とか、おかきとか、たぶんお前の好物ばっか」

「…ありがとう」
胸の奥がじんわりと熱くなる。お母さんの優しさがしみる。

「で、ところで…どこに行くの?行き先、聞いてないけど」

野田は少し照れたように笑って、前を向いた。

「秘密。でも、お前が好きそうなとこ。まあ、行けばわかるよ」

ちょっとムッとしたふりで言い返す。
「…ヒントくらいくれてもいいんじゃないの?」

「うーん、じゃあヒント。夏といえば、って場所」

「夏……? 海?山?ひまわり畑?」

「ふふ、それは着いてからのお楽しみ」
ハンドルを握りながら、野田は上機嫌だった。

こういう時間が、ずっと続けばいいのに。
助手席の窓から流れていく景色を眺めながら、私はこっそり、そう思った。

< 42 / 74 >

この作品をシェア

pagetop