女子高の王子様は、護る人が危なっかしくて困る
「君は嘘が下手だ。何があった?」
しばらくの沈黙のあと、悠翔がぽつりと漏らすように言った。
「……父が、また僕を他の学校に転校させるって」
凛の目がわずかに細められる。
「ここは、君の希望だったはずだ」
「うん。……でも、僕に決定権なんてないから」
悠翔は微笑む。その笑顔は、どこかあきらめの色をしていた。
「僕は“総理の息子”でいる限り、ずっと何かに守られて、縛られて、逃げられないんだろうなって……。
凛さんがどんなに近くにいてくれても、それは“任務”だって思ってる。そうでしょ?」
凛は何も言わなかった。
悠翔は、静かに続けた。
「でもね……それでも、僕は――
凛さんに会えて、ちょっとだけ自由になれた気がしたんです。
初めて、“僕のことを見てくれる人”がいるって思えた」
その言葉に、胸が痛んだ。
「なのに、また遠ざけられて……。僕は、ただ誰かの荷物でしかないのかなって……」
ポツリ、と頬にしずくが落ちた。雨ではなかった。
悠翔が、泣いていた。
音もなく、静かに。目を伏せ、肩を小さく震わせながら。
凛の胸に、鋭い衝動が走る。
(こんなに脆いものを、私は……“任務”として見ていたのか)