漂う花は、還り咲く
―――――



翌朝。

「六花、マジ走って!!」


「えええ!?なんで!?チャイム鳴ってなくない!?」

「ホームルーム始まってるっつーの!」

「うわやば!」


遅刻ギリギリの朝。

教室のドアを滑り込むように開けた瞬間、担任の目線がバチィッと刺さる。


「おはよう、お二人さん。あと三秒遅かったら廊下だったよ」

「せ、先生〜!私だって頑張って生きてるんですぅ〜」

「いいから座れ」


そんなテンポのいいやりとりも、すっかり日常。


授業中はノート取ったり取らなかったり、先生の話をぼんやり聞いたりしながら、教室の空気をなんとなく肌で感じてる。


どこにもなじんでるような、でもどこにも属してないような。


「ねぇ六花、昼どこで食べる〜?」

「んー、屋上行こっか!風強くなかったら!」

「また風にアイス飛ばされんようにしなよ〜」

「もうあれはトラウマ〜」


お弁当じゃなくてコンビニのパンとペットボトル。

食べ終わったらカロリーゼロ理論を唱えて笑い合って、ゆるく午後の授業へ。

――そして、放課後。

カラオケの帰り道は、ずっと笑いっぱなしだった。

コンビニの袋をぶら下げたまま、私たちはいつものようにふざけ合っていた。

すこしずつ空が茜に染まりはじめ、町に夜の気配が混じりはじめている。


「マジで今日の六花、声出てたって〜!ほら、あの曲のラスサビ!」

「でしょ!?いつも裏声で逃げてたとこ、今日は地声でぶつかったから!」


今日も、いつも通り。

何も起きるわけがないって、ポテチの入った袋を片手でくるくる回しながら、心のどこかで思ってた。
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