漂う花は、還り咲く

悩んでいると、隣からすっとメニューを覗き込まれる。


「これとか好きそう」

結翔が指さしたのは、いちごと生クリームたっぷりのクレープ。


「え、なにそれ、めっちゃ美味しそう」

「だろ」


なんで分かるの、って言いかけてやめた。

なんかちょっと、悔しい。


「じゃあそれにする!」

「俺、チョコにするわ。少しあげるから、六花はいちごにしなよ」

「いいの?やったー」


注文を受け取って、人をかき分けながらみんなを探す。

「あ、いた!」

「席取れたんだな」


ベンチに腰掛けて、みんなで甘いものを広げる。

さっきまでの絶叫が嘘みたいに、空気はゆるくて甘い。


「六花、それこぼすなよ」

「分かってるってばー」


いちごと生クリームたっぷりのクレープを一口。

ふわっと広がる甘さに、思わず頬が緩む。


「……おいしい」


「さっきまで死にそうだったやつとは思えねーな」

隣で晴が軽く笑う。


「それとこれとは別なの!」


みんながくすくす笑った。

少し落ち着いて、ふう、と一息つく。


「でもさ、びっくりしたけど……すごかったよね」

「なにが?」


伊織がストローをくわえたまま首を傾げる。


「おばけ屋敷。作り込み、めっちゃ細かくなかった?」


その一言で、ぴたりと空気が止まる。


「……は?」

最初に反応したのは千隼だった。


「え、あの口裂け女さ、口の縫い目とかちゃんと再現されてて——」

「いやいや、待て」


遮るように凛月が低く言う。


「見えてたのか?」

「え?」


何を言われてるのか分からなくて、きょとんとする。

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