漂う花は、還り咲く


二人の背中が人混みに紛れて見えなくなるまで見送って、ゆっくりと振り返る。


「……なに、その顔」


戻った瞬間、みんなの視線が一斉に集まっていた。


「いや」


伊織が口元を押さえて笑いをこらえている。


「六花って、あんな感じなんだなって」


「どんな感じ?」


首を傾げると、千隼が間髪入れずに答える。


「めちゃくちゃ女子高生」

「え、それどういう意味?」

「そのまんま」


さらっと言われて、なんとなく釈然としない。


「悪い意味じゃねーよ」

伊織がフォローを入れる。

「むしろ、ちゃんと学校生活してんだなって安心した」


「なにそれ」


思わず笑う。


「してるに決まってるじゃん」


そう言いながらベンチに戻ると、まだ少しだけみんなの視線が残っていた。


「……てか」

ぽつりと、結翔が口を開く。


「“ナンパ”ってなんだよ」

「あ」

さっきの。


「だって最初、急に声かけてきたじゃん」

「それをナンパ扱いすんな」


少しだけ不満そうな顔。


「えーでも事実じゃん」

「違ぇよ」


即答だった。

そのやり取りに、周りがくすっと笑う。


「まあでも、ナンパって言われても仕方ない出会い方ではあるな」


伊織が面白がるように言う。

「だろ?」

「よくねーよ」

結翔がぷいっと視線を逸らす。

なんかちょっと、拗ねてる?


「六花、普通にモテそうだもんな」

千隼がさらっと言う。


「え?」

予想外の方向からの一言に、思わず間抜けな声が出る。


「いや、あの感じ見てたら分かるだろ」

「全然分かんないんだけど」

「自覚ないのか」

「いやモテないし」


軽口みたいなやり取りが続く中で、ふと視線を感じる。


顔を上げると——

凛月と目が合った。

一瞬だけ、逸らされる。
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