もう一度、君と恋をするために
オフィスに戻ると、悠一が書類を整理していた。

「どこに行ってた?」

その声は、低く、静かで、でもどこか執着が滲んでいた。

「……三浦さんのところ、行ってた。」

一瞬だけ、悠一の指が止まった。

「もう、ランチには行けませんって言った。」

告げると、悠一は一拍置いて、まるで何もなかったように言った。

「このあと、会議の時間ある?」

「あっ、はい。」

あまりに自然な切り替えに、戸惑う。

さっきの反応は、ただの気のせいだったのか。

でも私は、確かに見た。

たった一瞬、彼の手が止まり、視線が揺れたのを。

「切り替え早いね。」

ぽつりと漏らすと、悠一は書類をめくりながら小さく答えた。

「仕事中だからな。」

それきり、またいつもの“同僚”の距離に戻る。

だけど胸の奥で、なにかがきゅっと痛んだ。

たった一言、たった一秒。

それだけで、まだ私はこの人を……と気づいてしまった。
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