未読のまま、置いていく
続き『未読のまま、置いていく ― 第九章:誰にも届かない声』

数日が過ぎた。
外の天気は良かったはずなのに、窓の向こうの光さえも、わたしにはただの白いノイズにしか見えなかった。

朝が来ても、心は重いままだった。
食べたいものも、見たいものも、何もなかった。
好きだったはずの音楽も、アニメも、全部どこか遠くて、まるで色のない景色みたいに感じる。

楽しくない。
なにをしても、なにを見ても、空っぽのまま。

信じたくても、信じさせてもらえなかったあの人。
優しい言葉と冷たい言葉の間で、何度も何度も揺れて、答えを出せないまま、ただ心がすり減っていった。

「もう、いいかな」
「もう、疲れたな」

ふと、そんな言葉が口からこぼれた。
誰に聞かせるでもなく、ただ静かな部屋の空気に溶けていった。

死んだら、楽になれるのかな。
この息苦しさも、この怖さも、この心の重さも、全部なくなるのかな。

そんな考えが、ひとつの影みたいにわたしの後ろをついてきた。
いつの間にか、わたしの中に「死ぬ」という言葉が居座っていた。

だけど――

死にたい、わけじゃない。
ほんとうは、誰かに助けてほしい。
でも、その「助けて」が、言えない。
助けてもらっても、信じられなくなってしまった自分がいる。

信頼を手放したわたしは、誰かに近づくことさえも怖い。
拒絶されるのが、また怖い。
「重い」「面倒」と思われるのが、怖い。

そんな自分が、また嫌いで、また苦しくなる。

――こんなわたし、誰が救えるの?

ベッドの中で丸くなりながら、スマホの画面を何度も開いては閉じる。
LINEの通知は、来ない。
誰の名前も光らない。
時間だけが、冷たく流れていく。

「ねえ、わたし、もうどうしたらいい?」

問いかけは、自分の中に沈んでいった。

ほんとうは、生きていたい。
でも、このままじゃ、生きてるのがつらい。

その狭間で、声にならない叫びが胸の奥に溜まっていく。
どこにも届かずに――ただ、心の中で響いていた。

『未読のまま、置いていく…』
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