魔物の森の癒やし姫~役立たずスキル《ふわふわ》でちびっこ令嬢はモテモテです~
「……悪くないにおいだな。味のほうはどうだかわからんが」
その一言に、みんながほっと笑顔になる。
やがて、器によそったスープを囲んで、みんなで食卓についた。
「いただきます!」
ひと口食べた瞬間、肉と野菜のうまみがじんわりと口に広がる。
「おいしい!」
「まあまあね。わたしの実のおかげよ」
「オレの爪のおかげだな」
「……ニンジン、忘れるな」
「えへへ、みんなありがとう」
笑い声が食卓を包む。
ムスティも小さなスプーンを持ち、もぐもぐとスープを味わっていた。
「……あたたかい」
ぽつりとこぼれたその言葉に、リュミの胸がじんと熱くなる。
その様子を、エルドは黙って見つめていた。スープを口に運びながら、胸の奥で考える。
(森の奥の異変……本当は今すぐ伝えるべきなのだろうが……)
けれど、今はまだ言えなかった。
こんなにも楽しそうなリュミの笑顔を見てしまったら――。
「エルドさん、スープおいしい?」
リュミがそう尋ねると、エルドはもう一口スープをすくって、小さくつぶやいた。
「……悪くない」
それはきっと、エルドなりの精一杯の「ありがとう」だった。