魔物の森の癒やし姫~役立たずスキル《ふわふわ》でちびっこ令嬢はモテモテです~

 エルドは肩を竦め、苦笑しながらリュミのほうへと目を向ける。

 森に、笑い声が響く。
 あの日が嘘だったかのように、世界は穏やかだった。

 けれど、その穏やかさの底には、たしかに戦いの記憶がある。
 焦げた土、倒れたままの木々。
 すべてが元通りになったわけではない。けれど、癒え始めている。それはきっと、未来の兆し。

 リュミはその場所から少し離れ、静かに目を閉じた。
 風が頬を撫で、どこか遠くから――声が聞こえた気がした。

 『ありがとう』

 そのひとことに、胸の奥がじんわりとあたたかくなる。
 リュミはそっと微笑んだ。

「ううん。リュミのほうこそ、ありがとう。……もうだいじょうぶ。リュミ、ちゃんと守っていくから」

 その声は、やさしい風に溶けるようにして、森の中へと消えていった。

 しばらくして、エルドがリュミのそばにやってきた。
 無言のまま立っていたが、ふと穏やかな声で言う。

「落ち着いたか?」

「うん……森が、息をしてるのがわかるの」

 リュミは微笑んで、空を見上げながら答えた。

「森って、生きてるんだね」

「当たり前だ。生きてるからこそ、怒りも悲しみもある」
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